2018年9月2日(日) 京都ホテルオークラにおいて、『第四回永守賞表彰式典』を開催し、第四回永守賞表彰式、ならびに研究助成2018贈呈式を行いました。会場には、多くの学術関係者をはじめ、永守賞受賞者、研究助成受贈者、財団関連の皆様方約210名にご出席いただきました。
永守賞については、受賞者6名による当日の講演、およびパネル展示が行われた後、審査委員会が開催され、「第四回永守賞大賞」にブーレント・シャルオル氏(米国 ウィスコンシン州立大学マディソン校工学部機械工学科 准教授 兼 同大学WEMPEC 副所長)が選出されました。
表彰式では、冒頭、堀審査委員長から審査経過報告が行われ、「第四回永守賞大賞」の受賞者が発表された後、永守理事長より受賞者の皆様に表彰状・賞杯を贈呈いたしました。これを受け、受賞者代表としてシャルオル氏から、受賞の喜びの挨拶をいただきました。
受賞者には、副賞として「永守賞大賞」は500万円、「永守賞」は200万円が授与されました。
続いて、助成事業「研究助成2018」について、大学助教等25名(新規助成 11名、継続助成14名)の研究に対し、助成金の贈呈が行われました。これを受け、受贈者代表として横倉 勇希氏(長岡技術科学大学 助教)から、助成に対する謝意を込めた挨拶がありました。
また、今回の式典では、特別講演 (1)『百年後の社会のために科学ができること』松本 紘 氏(国立研究開発法人理化学研究所 理事長)、(2)『ハプティクスがもたらす技術革新』大西 公平 氏(慶応義塾大学 特任教授)が行われました。表彰式、贈呈式など式次第を終えた後、祝賀会を開催し、盛会のうちに終了しました。
Dr. Bulent Sarlioglu/ Associate Professor, Associate Director of Wisconsin Electric Machines and Power Electronics Consortium, College of Engineering, University of Wisconsin-Madison, USA
この度は、栄誉ある第4回永守賞大賞を賜り、大変光栄に存じます。
世界のエネルギーは希少ですが、エネルギー需要は増大しています。そのため、エネルギーの効率的な利用が必要とされています。ほとんどの発電には発電機が必要です(太陽光発電など例外もあります)。モーターは電気のおよそ50%を消費し、パワーエレクトロニクス駆動装置を必要とするモーターもあります。従って、発電機、モーター、駆動装置のエネルギー効率は、貴重な資源を節約して温室効果ガス排出量を削減するうえで極めて重要です。
こうした状況を踏まえ、私はワイドバンドギャップ・デバイスを用いた軽量超高効率パワーエレクトロニクス・コンバータによって効率を高めた新たな電動機の研究開発を研究の重点としています。私は、ステータに永久磁石を使用した二重突極磁束切替式永久磁石機械構造を使用した新しいモーターのトポロジーに先駆的に取り組みました。さらに、パワーエレクトロニクス・インバータ駆動へのワイドバンドギャップ・デバイスの応用で多くの貢献を行いました。これにより、重量と体積は50%削減され、損失の抑制により効率が改善しました。具体的には、効率は96%から98%に向上しています。また、従来型モーターの効率改善にも取り組んでいます。未来の自動車、飛行機、電車では、駆動系やその他のシステムに使用されるモーターの数が増えると考えています。そのため、モーターや駆動装置の研究開発には大きな将来性があります。
日本電産を創業し、私たちの生活に影響を与えるモーター、すなわちハードディスクのマイクロモーター、ロボット・アクチュエータ・電気製品など様々な場面で使用されるモーターの開発に生涯を捧げておられる永守理事長に深謝申し上げるとともに、敬意を表明いたします。この度の受賞は、電動モーター、発電機、アクチュエータ、駆動装置の分野における私の研究者としてのゴールの実現に向けて大きな拠りどころとなります。また、永守財団の理念の実現「豊かな生活の維持と地球環境の永続的な保全に寄与すること」に繋げて参ります。この賞をいただけることは、大変幸運なことであると理解しています。私の専門家としての成長にこれまで支援をいただきました皆様に、感謝申し上げます。今回の賞に恥じないよう研鑽を積んでいきます。イノベーションを進め、効率と持続可能性を改善することで社会に貢献していく所存です。