未来への取り組み

メタバース空間でリアルな感覚を再現する新世代触覚デバイス

振動により「触れる」感覚を再現する触覚デバイス

近年、現実とは異なる仮想空間を指すメタバースが話題となる中で、次世代の触覚デバイスの進化に注目が集まっています。触覚デバイスとは、振動を利用して触覚をフィードバックするもので、触覚デバイスを搭載した特殊なグローブなどにより「押す」や「つかむ」といった実世界の感覚を再現しています。仮想空間におけるユーザーエクスペリエンスを格段に向上させると期待されています。

触覚デバイスのもとになった技術は、携帯電話のバイブレーション機能などです。その後、スマホやタブレットでアイコンなどを長押しすると振動する触覚タッチ、さらにコピー機の液晶パネルやカーエアコンの操作ダイヤルの触覚フィードバックなど様々な用途で普及しています。

初期は振動感覚のみでしたが、技術の進化に伴い、よりリアルな感覚を提供できるようになりました。

特に触覚デバイスの特性が生かされている用途の1つが、ゲームのコントローラーです。銃を撃った衝撃やカーレースの操縦感覚などを再現し、ゲームの世界への没入感をより高めることに大きく貢献しています。

シリコーンゲルを用いた独自の技術で、よりリアルな触覚を再現

触覚デバイスでリアルな感覚を表現するためには、単純な振動を生じさせるだけではなく、より低い周波数帯域をカバーすることで微細かつ多彩な触覚や力覚を再現する技術が求められます。従来の触覚デバイスでは、板バネを使用して振動を起こしていましたが、この方式では共振の抑制が難しく、低い周波数帯域での力覚の再現がしづらいという課題がありました。

そのため、NIDECでは、板バネの代わりに、粘弾性の特性を持つシリコーンゲルを用いた製品を開発することで共振の問題を解決し、よりリアルな触覚や力覚の表現を可能にしました。さらに板バネのような金属疲労の心配がなく、耐久性や耐衝撃性が向上したほか、部品点数が少ないためコストメリットも高まりました。

ダンパーに装着したシリコーンゲルの粘弾性の特性を生かして多彩な触覚や力覚の提供を可能にしました。
従来型のLRAのような共振ピークがなく、あらゆる周波数帯域でフラットな触覚や力覚を提供できます。

次世代触覚デバイスでさらなるリアルを再現

次世代の触覚デバイスはメタバースとの親和性が高く、今後、XR(クロスリアリティ)のテクノロジーの進化とともに、SFの世界のような製品やサービスが次々に実現されるでしょう。例えば、ゲームであれば、ヘッドマウントディスプレイとともに触覚グローブや触覚ブーツを装着して、あたかも自分がプロスポーツ選手になったかのような体験が楽しめるようになるかもしれません。仮想空間にあるショップを訪れ、手触りなどを確認しながらファッションアイテムの買い物を楽しめる社会は、もうすぐそこまで来ています。エンターテインメントの世界だけではなく、医療などへの応用も期待されています。医師が遠隔操作によって触診をすることなども、触覚デバイスの進化によって可能になるでしょう。

NIDECは、さらなるリアルを追い求めて、新世代触覚デバイスの開発を続けていきます。

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