無効電力

直流の電力は単純に電圧と電流の積で計算してよい。 交流の場合には複雑である。まず各瞬間での電圧と電流の積は瞬時電力(instantaneous power)と呼ばれる。瞬時電力は正弦波であり，その周波数は電圧や電流のそれの2倍である。しかし，図1に示すように3つの場合で状況が異なる。

(a) 電圧と電流の位相が一致しているときには，瞬時電力が負にはならない。これは，電力が有効に伝送されていることを意味する。
(b) 位相がずれているときには瞬時電力が負になる時間帯がある。
(c) 90°の位相差のときには，瞬時電力の時間平均は0である。電線の抵抗Rによる電力の消耗は_i2Rであり，いつでも正であるから，システムは無駄な仕事をしている。
電圧の実効値と電流の実効値の積は見かけ上の電力であり，これを皮相電力(apparent power)と呼ぶ。一般的な場合には，皮相電力は有効成分（real component)と無効成分(reactive component)と含むと考える。それを示すのが図2である。
電圧と電流の位相差は回路のリアクタンス成分（巻線による誘導性とコンデンサによる容量性の合成）のために発生するので，英語ではreactive power と記されるものと考えられる。多相交流の場合には，瞬時電力は時間に無関係に一定になる。