2-3-4 アラゴの円板によるモータ
それではACモータの説明によく使われるアラゴの円板(図2.42)とはなんだったのでしょうか?
アラゴの円板の原理は、銅やアルミでできた円板を磁石で挟んで、磁石を動かすと、円板に渦電流が発生し、この渦電流によって、円板には磁石の移動方向に動こうとする力が発生するというものです。
この原理によって動いている身近な機器に、各家庭の電力引込線に設けられている積算電力計(誘導型電力量計)(図2.43)があります。
積算電力計では、アルミ円板を挟んで、一方に細い電線を多数巻いたコイルの磁心があります(図2.44)。コイルを電灯線に並列接続しても、電線が細く長いため、消費電流はわずかです。このコイルを電圧コイルと呼びます。
反対側には、十分太い電線を少しだけ巻いたコイルの磁心が対向しています。
このコイルを、電灯線に直列接続すると、家庭で消費する電流はすべてこのコイルを経由して流れます。
しかし、コイルの電線は太く短いので、電圧降下はわずかです。このコイルを電流コイルと呼びます。2つのコイルは、インダクタンスの違いにより電流位相がほぼ90°異なり、コンデンサラン型モータのときと同じように回転磁界が発生します。
渦電流を利用した実用モータには、渦電流モータがあります。このモータには、1章で説明したように軟鋼を主要材料としたロータが使われ、磁界が移動することでロータには渦電流が誘導されます。
渦電流モータは、図2.45 のような特性をもち、印加電圧を変化させてトルクを制御でき、モータ軸を拘束した状態でも脈動の少ないトルク特性が得られる特長があります。
このことからこのモータをトルクモータともいいます。
トルクモータは、独特の特性を利用して、押しつけ機構やブレーキ機構、巻き取り装置などに用いられます。しかし制御機構なしでは、回転速度を保持するのが苦手で、一般動力用モータには使いにくく、生産量は多くありません。
三相交流
電力会社は、電力を三相交流で送電しており、工場でも三相交流を用いるのが一般的です。
なぜ送電は三相で行われるのでしょうか?
いま、120°ずつ位相の異なる電気を送ることを考えてみます。それぞれに行きと帰りの線があるので、行きが3本、帰りが3.本で合計6本です。
そこで、帰りの線を一緒に束ねて共通化すると線は4本になります(図2.46)。
これを三相4線式といいます。このとき、帰りの線に流れる電流Ⅰは、
Ⅰ = Ⅰ0{sinθ+sin(θ+2/3π)+sin(θ-2/3.π)}
これを計算するとゼロになります。つまり4本目の線には電流が流れないのです。
電流が流れなければ電線はいらないので、省くことができ、電線は3.本ですみます。
これを三相3線式といいます。このように、三相交流による送電は、3.本の線で6本の電線と同じ電流を流すことができる合理的な配線方法です。