2-3-2 誘導モータの回転原理
回転磁界型モータには、1章でみたように多くの種類があります。
この章では、工場の動力用モータ(図2.35)や、家庭でも扇風機や洗濯機などに広く使われている誘導モータを見ることにします。
モータの入門書では、誘導モータの回転原理をアラゴの円板(図2.42参照)で説明した例があります。
一般的な誘導モータのロータは、図2.36(a)のような構造です。さらにロータを分解すると、ケイ素鋼鈑と図2.36(b)のような、かご状のアルミ部分とに分かれ、円盤状にはなっていません。このようなロータのことを、かご型ロータと呼びます。
かご型ロータを用いたモータの回転原理は、アラゴの円盤で説明するのは適切ではなく、DCモータと同じ手法で説明できるのです。
図2.37のように、閉じたコイルを磁界中に置き、外側の磁石を回転させます。すると、コイルには直流モータの発電原理でみたように発電作用が生じ、電流が流れます。
電流が流れると、元の磁界と作用してコイルにはトルクが発生して、コイルは回転を始めます。
図2.38のようにコイルの数を増やすと、コイルはかご型に置き換えることができます。
つまり、誘導モータのかごは、DCモータのコイルに相当します。
誘導モータの回転原理を整理すると、次のようになります。
- ①磁界を回す
- ②誘導電流が発生
- ③電流と磁界の作用で力が発生
- ④ロータが回転
実際のモータでは、磁石を動かす代わりに複数のコイルを順に励磁して、磁石を動かすのと同じ効果を得ます。励磁を変化させるには、時間的に位相のずれた2つ以上の正弦波が必要です。
工場では、互いに120°位相のずれた、AC200Vの3相交流電源を使います(図2.39)。
家庭の電源は単相AC100Vのため、誘導モータを使うには何らかの方法で、電源と位相のずれた正弦波を作って磁界を回転させる必要があります。その一つの方法が、コンデンサを用いてコイルの電流位相を90゜進める方法です。このような方法で回転するモータを、コンデンサラン型単相モータと呼びます。
コンデンサラン型単相モータでは、電源に直接接続される主巻線と、コンデンサを介して電源に接続される補助巻線の2組の巻線で、回転磁界を発生させます。
コンデンサラン型モータの構造は、1章の図1.2に示しています。