2-1-6 鉄心溝のあるDCモータの回転原理まとめ
DCモータのトルクに関して、参考書[1]の解析結果から、次の重要な結論が導かれます。
鉄心溝のあるDCモータのトルク算出でも、見かけ上はBLI則が成立する。
これを別の言葉で説明すれば、モータをエネルギー変換器ととらえると、モータでは、電気エネルギーを直接機械エネルギーに変換する考え方と、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換し、さらに機械エネルギーに変換する考え方とがあります。
このどちらの考えを採っても、回転子が1回転する間に取り出せる機械エネルギーは一致するのです。ですから、鉄心のあるDCモータのトルク発生原理を、BLI則で説明してもよいという結論になります。
ただし、ロータの回転位置によるトルクのムラなど、精度の高い検討には、BLI則だけでは不足で、鉄心への磁束集中を考慮した解析が必要です。
この項のまとめ
DCモータに関し、今まで検討してきたことをまとめてみます。
- ①トルクは電流に比例する
- ②回転速度は、モータ端子の電圧と逆起電力のバランスで決まり、負荷が同じなら端子電圧が高まると回転速度が上がる
- ③端子電圧が同じなら、負荷が減れば回転速度は上がり、負荷が増えると回転速度は下がる
- ④鉄心溝付きモータの特性を、鉄心なしモータで説明しても見かけ上の特性は一致する
この項の最後に、端子電圧を一定としたときのDCモータの代表的な特性を、図2.21に示します。
図には2つの直線が示されています。
右下がりの直線は、速度の項で説明したように、回転速度とトルクの関係を示しています。
回転速度とトルクの関係を表す右下がりの直線において、左上端が無負荷回転速度、右下端が起動トルクです。
右上がりの直線は、トルクと電流の関係を示したものです。モータには、無負荷回転の時も軸受けやブラシの接触による損失がありますが、それを補正すれば、トルクと電流とは比例関係になっています。
一例として、モータが負荷Aの状態で動作しているとします。モータの回転速度は①、電流は①′です。ここで負荷がBの状態になったとすれば、回転速度は②、電流②′の状態になることがわかります。