1-3-2 ブラシレスDCモータ
DCモータの欠点であったブラシと整流子を取り除いたモータに、ブラシレスDC(brushless DC motor)モータがあります。その特長を挙げると、
①永久磁石界磁型 DCモータの界磁用永久磁石(ステータ側)と電機子巻線(ロータ側)を交換して、界磁用永久磁石をロータ側、電機子巻線をステータ側に配置した
②整流子の位置変化によるブラシを用いた通電切換の代わりに、ロータ位置信号検出のために ホール素子を用いて、インバータにフィードバックして通電を制御する
これが、ブラシレスDCモータです。図 1.7 は、ブラシレスDCモータのシステム構成を示します。
インバータからの駆動電圧は交流になるため、このモータを、交流で駆動する永久磁石型同期モータとして AC モータに分類する考えもあります。しかし、本書では独立した一つの分野であるブラシレスDCモータとして扱うことにします。
DCモータと回転原理が類似しているため、回転力(トルク)と速度の関係は、DCモータとほとんど同じになります。
DCモータの優れた制御性をそのままに、DCモータと比べてブラシがないので、電磁ノイズや寿命の点で有利であること、効率が高く省エネに有利であること、設計の自由度が高く機器組み込み設計がしやすいなど、さまざまな特徴があります。そのためこれらの利点を活かした、HDD(ハードディスクドライブ)やCD-ROM ドライブのような情報機器をはじめ、冷蔵庫や洗濯機のような家電製品にまで幅広く使用されるようになりました。
ブラシレスDCモータが現れて発展する過程で、初期のステータ巻線としては分布巻が使われましたが、最近では、ほとんどが集中巻です。分布巻と集中巻については、コラム「分布巻と集中巻」を参照ください。
また、ロータへの永久磁石装着法の違いから、
- (1) 表面磁石型(Surface Permanent Magnet:SPM)
- (2) 埋込磁石型(Interior Permanent Magnet:IPM)
に分類されます。表面磁石型:SPMは、ロータ外周に永久磁石が張り付けられたタイプです(図1.8参照)。
埋込磁石型:IPMの断面構造を図1.8(右)に示します。IPM型では永久磁石の埋め込み方法には様々な構造が可能です。IPM型構造の目的は、遠心力によって磁石が剥がれる危険性を減らすこと、またリラクタンストルク(後述のスイッチドリラクタンスモータの項を参照)を積極的に利用することにあります。
SPMやIPMの磁極位置を検出するため、ホール素子やロータリエンコーダといったセンサを利用するか、あるいは省略(センサレス駆動)するかによって分類する方法もあります。
ブラシレスDCモータがアクチュエータとして実装される際には、モータ本体と駆動用インバータおよびその制御回路等は極めてコンパクトにまとめられます。その実例を図 1.9 に示します。
分布巻と集中巻
図1.10では、24スロットのステータで、(a)4極と(b)8極を実現する場合を示します。しかし、コイルの結線の切り替えによって極数を変更する方法は、複雑な割には性能が劣るので最近は敬遠されています。
一方、図1.11で示すように、6コイル集中巻ステータでは少ないスロット数にもかかわらず結線によって(a)2極、(b)4極および(c)8極モータになります。
コンバータとインバータ