1-2 モータの構成要素
モータの構成要素は、図1.2に示すように①~⑤の主要部分に大別されます。
- ①ロータ(rotor)、または回転子
- 回転する部分
- ②ベアリング(bearing)、軸受
- ロータの回転軸(シャフト:shaft)を支持する部分
- ③ステータ(stator)、または固定子
- ロータを回転させるための力を発生させる部分
- ④ブラケット(bracket)またはエンドプレート(end plate)
- ベアリングを支持し、ステータと一体になっている部分
- ⑤リード線(lead wire)
- モータへ電力を供給する駆動回路あるいは電源に接続される電線
ステータ
これら構成要素の中で、モータの基本的な分類法に大きく関係するのが、ステータ(固定子)とロータ(回転子)です。ステータの典型的な構造として、次の4種類が挙げられます。
- A:分布巻ステータ
- B:集中巻ステータ
- C:誘導子型ステータ
- D:永久磁石型ステータ
ロータ
ロータについては、10種類に分類できます。
- ①かご型ロータ(squirrel-cage rotor)
- ②突(凸)型かご型ロータ(salient-poled squirrel-cage rotor)
- ③半硬磁鋼ロータ(semi-hard steel rotor)
- ④軟鋼ロータ(solid-steel rotor)
- ⑤凸極型珪素鋼鈑ロータ(salient-poled lamination rotor)
- ⑥微細歯条型軟鋼ロータ(solid-steel rotor with fine teeth)
- ⑦永久磁石型ロータ(permanent-magnet rotor)
- ⑧誘導子型ロータ(inductor rotor)
- ⑨巻線型ロータ(winding rotor)
- ⑩整流子型ロータ(commutator rotor)
次項1.3では、上に列挙したステータA~Dとロータ①~⑩のうち、どのような組み合せで各種モータが分類されるかについて見ていくことにします。
モータを構成する材料
モータを構成する主要素材を簡単に説明しましょう。
- (1) 電線(wire)
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電線とは電流の通路であり、導線(conductor)とも呼びます。材料としては銅が一般的ですが、まれにアルミニウムが使用される場合もあります。
電線には、電源からモータへと電力を供給するためのリード線と、モータ内部に巻かれて結線された巻線があります。磁界を発生するための電線という意味から、巻線のことを英語では magnet wire と称します。また、電線の絶縁材(後述)にエナメル樹脂を用いていたことから、日本語ではエナメル線という名称もあります。
現在では、絶縁材に高分子材料を用いていますが、エナメル線の名前だけが残っています。
エナメル線の名称は、モータの巻線の部材という意味から、上記の英語magnet wire に対応する日本語として用いられます。
- (2) 鉄心(core)
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鉄心とは磁束の通路であり、鉄心の文字から分かるように材料は鉄です。また、2つの磁石間を磁束で結合するための鉄心を継鉄(ヨーク:yoke)といいます。
機械構造用の鉄と鉄心用の鉄には、副成分の種類に違いがあります。機械構造用の鉄には炭素(C)が含まれていますが、鉄心用の鉄にはシリコン(Si)が混入されており、これには珪素鋼という名称があります。モータの場合には、鉄心はステータ鉄心とロータ鉄心とに分かれ、両者間の空隙(エアギャップ)を通して磁気回路が構成されます。電磁石界磁型 DCモータ(後述)の界磁回路を構成するステータ鉄心では、磁極は直流で励磁されるため鉄心を積層構造する必要はなく、軟鋼が用いられます。
一方、電機子回路を構成するロータ鉄心では回転とともに磁束が変化するので積層鉄心が用いられます。また、小型 DCモータでは、磁極に永久磁石がよく利用されます。同期モータのステータ、誘導モータのステータとロータの鉄心は共に交流で励磁されるので、何れも積層鉄心を用います。
- (3) 絶縁体(材)(insulator)
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電流が所定の場所以外に流れないように遮断するのが絶縁体であり、その素材が絶縁材です。
これには、ゴムやエナメルといった高分子化合物・樹脂、紙、マイカ、ガラス繊維などが使われています。
- (4) 永久磁石(permanent magnet)
- モータの構成する素材で重要なのが、磁界の発生源となる永久磁石です。これも鉄を主成分とする合金あるいは酸化物といってよいでしょう。
ステータとロータの各国語
ステータとロータの各国における呼び名をまとめておきます。