ソリューション事例

電動パワーステアリング用 モータ・ECUのパワーパック化

電動パワーステアリング用モータとECUを一体化
世界最小・最軽量クラスのパワーパック開発

省エネ観点から開発されて普及したEPS(電動パワーステアリング)がさらに進化を遂げています。自動車市場は省スペース・軽量化に対するニーズが強く、従来ステアリング駆動モータと別体であった制御部・ECUをモータと一体化し、よりコンパクトな製品の開発を進めました。
モータとECUを一体化することで相互の配線に必要なハーネスの削減に加えて製品の組立工数が省けるため、コストダウンにも寄与することになります。また、モータ-ECU間を結ぶハーネスはアンテナとして機能しますが、一体化によってアンテナを追放できるのでノイズ飛び込み問題からも開放されることになります。

別体型のEPSモータとECUを一体化することで小型・軽量化やコストダウンだけでなく、ハーネスからのノイズ侵入問題も解決できる。

もともと別体であった製品を一体化するためには技術的な障壁が当然のように立ちはだかります。
まずは熱の問題でした。モータ自体が発熱することに加え、一体化したEPSは熱の逃げ場がないという二重の問題を抱えることになります。さらに、モータに合わせてECUも小型化しなければならず、高集積化した電子回路の放熱性はさらに低下します。とくに電解コンデンサにおいては寸法も大きく、熱によるドライアップ・電解液の蒸発という問題も抱えています。熱はハンダにも大きな影響を与えるので、熱疲労によって内部に微少なクラックが発生するという問題も生じます。
コンデンサについては最新の小型・低インピーダンスのコンデンサを採用することで小型化・高信頼性を実現し、熱の影響やスペース占有などの問題を解決するレイアウトを見つけだしました。ハンダについては素材の組成やハンダランド部の形状などを見直すことで解決していきました。

一体化するために大きな課題となる熱の問題。高集積化した電子回路に対して、素子の選定、回路レイアウト、基板パターンやランド設計の見直しによって課題を克服して一体化を実現。

モータとECUを一体化する際に併せてチャレンジしたのが制御性の改善です。 モータでアシストする際のトルクの自然な出方を実現するために、操舵感覚を阻害し振動や騒音の原因となるコギングやトルクリップルを最小限に抑えるような制御方法の構築も一体化と並行して行いました。
制御方法構築のために一体化されたEPSパワーパックをテスト用の実車に取り付けて基本動作を繰り返し、データを取るところからスタート。モータのトルクの出方と操舵感覚の関係性を探りながら、さらにそれを実現するロジックを設計してはテストによって評価を行い、さらに改良するというサイクルを回しました。
そして、より自然な操舵感覚を実現し、騒音や振動の元となるトルクリップルを最小限に抑えるために制御パラメータを徹底追求したモータECU一体型のEPSパワーパックが完成しました。

一体化と同時に、操舵感覚・騒音・振動の改善に踏み込んだ制御方法の構築にもチャレンジした。

開発者からのコメント

熱や制御方法の他にも従来のレゾルバに替わるMRセンサの導入による問題など、数々の課題を克服してEPSパワーパックを開発しました。今後、我々が注力すべきは自動運転への対応であると考えています。万が一故障が発生した時のフォールトトレランスの問題、人間との操舵受け渡しの問題、解決していく課題はたくさんありますが、自動車の進化は留まることはないでしょうし、トレンドに沿った製品を開発していくのが我々の使命だと思っています。部品からモジュールへ、さらにモジュールに伴う制御方法の構築へと上位システムを手がけるようになり、クリアすべき課題が高度になりましたが、今後も顧客から信頼できるパートナーとして認めていただけるよう、技術の研鑽を続けていきたいと考えています。

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