社会貢献活動
教育への貢献
NIDECグループの取り組み事例を紹介します。
環境授業・ものづくり教室
子どもたちに地球環境や理科に対する関心や理解を深めてもらうため、地域の小学校や学習施設での環境授業やものづくり教室を各地で行なっています。
2007年度から京都市で始めた小学生向け環境授業は17年目を迎えました。当社では2020年度から新型コロナウイルス感染拡大防止の為、オンラインによるリモート授業形式を導入しています。2022年度には京都府下で合計5回219名の小学生に身近に使われているモータの働き、モータと電気エネルギーの関係などを学んでもらった上で、地球環境のために子供達ができることを一緒に考えたり、当社が目指すモータの未来を紹介したりしました。また、ものづくりの面白さを体験してもらうために、モータの製作実習も行っています。
京都大学工学研究科寄附講座「優しい地球環境を実現する先端電気機器工学」の設立
ニデックと京都大学は2017年4月、先端的電気機器研究開発を通して将来の地球環境の持続的成長を支えるとともに、当該分野に精通した若手人材の育成を目的として、ニデックの支援による寄附講座「優しい地球環境を実現する先端電気機器工学」を、工学研究科に設立しました。
本寄附講座では、異なる複数の学術分野を融合させるという見地に立ちつつ、持続可能な地球環境を実現するための革新的な電気機器に関する技術研究開発に取り組みます。こうした研究開発は基礎科学から産業応用までの幅広い分野に対する大きな寄与が期待できる上、大学院生の研究指導や次代を担う若手研究者の育成という点においても効果があると考えられます。
中村武恒特定教授へのインタビュー
寄付講座「優しい地球環境を実現する先端電気機器工学」を率いる、京都大学大学院工学研究科の中村武恒特定教授(以下、中村教授)に、モーター研究の内容と展望についてお話を伺い、「モーターがアカデミックかつ魅力的な装置であることを次世代に伝えたい」という強い想いを語っていただきました。
Q まず、本講座が設けられるきっかけは何だったのですか。
A
元は京都大学の山極壽一総長とニデックの永守重信会長の交流から始まったと聞いています。
京都大学の中でモーターを研究しているのが自分しかいなかったということもあり、寄附講座の設立に際して私を選任していただきました。
Q 「先端的電気機器研究開発」とは具体的にどういったものなのかをお聞かせいただけますでしょうか。
A
その質問にお答えするには、本講座での研究内容をご説明することになります。
私は初め、超電導材料(ある種のセラミックスなど、超低温にすると電気抵抗が限りなくゼロに近づく材料)を用いてモーターを開発する研究を行っていました。これはモーター自体の効率を高めるという意味でハード面の研究です。ですが、寄附講座ではこうしたハード面の研究だけでなく、モーターの働きをいかに効率的に制御するかというソフト面での研究も行っています。
私たちはモーターの制御として2つの方法を考えています。1つはモーターが自律的に自身を制御するというもの。つまりモーターがモーター自身を自己制御するという方法です。例えば、車のタイヤに用いられるモーターがあったとします。タイヤがぬかるみにはまったのでアクセルを踏んで抜け出そうとする時、モーターにあまりに大きな電流が流れてしまうとモーターが焼き付いてしまいます。そこで、モーター自身が大きすぎる電流を受け取らないよう自己制御を行うのです。これはいわゆる「中からの制御」というものです。
もう1つは複数のモーターをIoT等で協調制御する方法です。これも車のタイヤのモーターが例に挙げられるのですが、それぞれのタイヤに使われている4つのモーターを同時に通信で制御してタイヤの回転を揃えたり、あるいは前の2つのモーターだけを多く回転させたりといった具合に制御するようなものです。これは「外からの制御」です。
つまり、先端的電気機器はハード面・ソフト面の両方で最先端の技術を用いたモーターであるということになります。
Q 中村教授の研究内容である「インテリジェント電気機器とそのシステム化」とは、ソフト面での研究としてご説明いただいた、制御機能を有した高効率のモーターを研究することを指すのですか。
A
それもありますが、モーターのみに着目した研究ではありません。
モーターを動かす際には、モーターに色々な装置を繋ぎます。まずはインバーターをモーターに繋ぎ、モーターの先にはモーターによって動かされる装置を繋ぎます。そしてそれら全てを制御する通信装置があります。インバーターは電気電子回路学、モーターは電磁気学、モーターによって動かされる装置(ここではコンプレッサーとする)は力学、通信装置については情報理論など、個々の装置や現象を研究するのには個々の学問があるわけです。
しかし、私はそれら全体を一体化・総括して考える学問を作ろうとしています。異なる物理を1つの学問として考える「マルチフィジックス」の一種です。例えば、モーターの効率だけを電磁気学の視点から追求しても、それがインバーターやコンプレッサー全てにとっての最高効率に繋がるとは限りません。場合によっては、モーターの働きは最高効率ではないが、インバーターやコンプレッサーなども含め全体として見ると最高効率のアウトプットをするということがあります。このように部分最適ではなく全体最適を追求するシステムのための学問を作ろうとしています。
Q ニデックはモーター自体の効率を追求するハード面の研究を、中村教授はモーターの働きとその周りのシステムを含めた効率を追求するソフト面での研究を行っている。そして、お互いの研究について情報交換しているという理解でよろしいですか。
A おおむねそうですが、京都大学の研究室でハード面の研究をしていないというわけではありません。モーターの回転理論をそもそも見直すという研究をしようとしている学生もいます。一通りのモーターは19世紀に既に出尽くしていて、各種モーターの理論というのは確立されているのですが、実は「モーターの種類に関わらない総合的な理論」はまだありません。つまり、各論はあるけれども総論はありませんので、それを研究したいというわけです。
Q 中村教授の研究室を表すキーワードとして、「総合的」「統一化」「総論」といった言葉が挙げられるように思いました。
A
その認識で間違いないと思います。各論や一部分に着目するというよりも、それら全てを全体的に研究する余地をモーターはまだまだ残しています。
そういう意味でもモーターは極めてアカデミックで魅力的な装置であると私は考えています。そのことを若い人たちに伝えていきたいと強く考えています。若い人も是非モーターに注目してもらいたいのです。