サステナビリティ
サステナビリティ担当役員メッセージ
常務執行役員
牛尾 文昭
様々な声にこれまで以上に耳を澄まし、力強くしなやかな会社成長を実現
2024年1月にサステナビリティ管理業務を担当して以来、私はこれまで以上に「聴く」ことを強く意識して職務に向き合っています。力強くしなやかな会社成長を実現するうえで、「会社が目指す事業戦略の方向性と世界が求める社会的課題解決への道筋が一致していること」が大前提である今日、当社を取り巻く様々な声にこれまで以上に耳を澄ます必要があるからです。
今日、私たちは気候変動対策に伴うエネルギー革命、パンデミックの影響、地政学的混乱といった世界規模の構造変化を促す事象に直面していると同時に、人工知能(AI)の急速な進化と普及に代表されるような技術的大転換点期の只中にいます。当社は、マクロレベルで進行するこれら社会情勢の変容に適応する形で、経営戦略や投資の方向性を変化させてきました。
そのような状況下にあって、当社は、経営幹部と機関投資家様へのヒアリング結果に基づき、経営の持続可能性を確保するうえで最も重要なテーマを2021年に設定し、環境・製品・人材・サプライチェーン・ガバナンスを巡る15領域(マテリアリティ)におけるリスクの軽減と機会の発見に取り組んできました。グローバルに製造業を営む当社が、不測の変化に適応するうえで最も大切な要素は、これらマテリアリティ領域に横断的なインパクトを与え得る「環境」と「人」に集約されます。
「環境」の声を聴く
モータ等駆動技術の世界でグローバルスケールのビジネスを営む当社には、提供する製品自体が持つ環境特性を向上させると同時に、材料調達、製造から廃棄に至る全てのプロセスで使用するエネルギーと資源の使用量を最小化する責務があります。これらは世界共通の課題である循環型社会の実現や、気候変動対策の核となる温室効果ガス削減につながる取り組みでもあり、当社は製品の設計思想や製造方法に新たな環境価値を加えることで、社会の期待に沿った事業成長を実現します。当社は2050年度にサプライチェーン全体のCO₂排出量ネットゼロ構想を公表しています。当社に求められる合理的な取り組みの在り方を、お客様からのアドバイスや国際的イニシアチブへの参加を通じて学び、実行に移しています。環境情報のグローバル開示プラットフォーム(CDP)を通じた気候変動および水の利用に関わる報告、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のガイドラインに沿った事業に対する気候変動インパクトの分析・開示、そして2030年温室効果ガス削減目標の策定などがこれに相当します。この目標は、パリ協定における「1.5℃目標」を達成するための科学的根拠に基づいた目標と認められ、国際的気候変動イニシアチブのSBTi(Science Based Targets initiative)よりSBT認定を取得しました。いずれにおいても、計画達成に至る道筋では広範なバリューチェーンとの効果的な協働が必要になります。
「人」の声を聴く
世界各国で操業する当社拠点では多種多様な国籍、人種、宗教、文化的背景、専門性などを備えた10万人を超える従業員が多くのお客様、お取引先様、周辺コミュニティの皆様に支えられながら事業を営んでいます。このことは、国により異なる文化的前提を理解したうえで国際的に通用する責任あるビジネス行動をとることの重要性を示唆していると同時に、バリューチェーンとの緊密な対話が当社事業継続上の鍵であることを示しています。
さらに、様々なバックグラウンドを持つ多くの従業員の存在は、当社の将来を担う人材の層がそれだけ厚いことを意味しています。当社は潤沢な人材プールを通してその構成員である一人ひとりのポテンシャルに注目し、会社と自己の成長機会を切り開くことができる人材を発掘、育成するとともに、働き方の柔軟性を高めながら従業員がモチベーションと喜びを得られる職場環境を整えたいと考えています。そのためには、会社が求めるスキル特性と働く個人の仕事観・生活観を丁寧に擦り合わせていく必要があり、それを可能にするプロセスの構築が当社人材戦略における中核的課題であると認識しています。2024年4月に設置した「グローバル人事戦略コミッティ」はそうしたプロセスの第一歩です。
また、これら社内外の幅広い利害関係者と意義あるコミュニケーションを図る上で欠かせないのが人権の視点であり、今後ますますその重要性が増していきます。全グループに適用される人権方針の策定に続き、当社はその本質的な理解を深めつつ社会的視座から自社とサプライチェーンの現実を把握する体制を構築していきます。
サステナビリティに関するガバナンス体制
マテリアリティを含む持続的経営に関わる諸課題に取り組むうえで必要なガバナンス組織として、当社は執行機関である「サステナビリティ推進会議」、並びにその監督機関である「サステナビリティ委員会」を設置しています。「サステナビリティ推進会議」は、原則として2か月毎に開催され、社長以下執行役員が実施計画の進捗状況と課題を協議するとともに新たな社会的要請に関する情報を共有します。同会議の内容は、社外取締役が過半数を占める「サステナビリティ委員会」に報告され、その後取締役会と共有されます。なお、2024年6月には執行役員の報酬を当社のESGパフォーマンスと連動させる仕組みを導入しました。
当社が将来にわたり持続的成長を図るうえで、ステークホルダーの皆様との連携は欠かせない要素です。当社サステナビリティ行動の主旨を背景にある意図と併せてご理解いただけることを願いつつ、皆様からの忌憚なきフィードバックをお待ちしています。