2023年度特集 - 統合報告書2023
コーポレート・ガバナンス ― 強固なガバナンス体制の構築 ―

社外取締役インタビュー

2020年より当社の社外取締役を務めている酒井貴子氏。指名委員会およびサステナビリティ委員会という当社のこれからを象徴する会議体の長を務めてもいる酒井氏に、当社が変化していく様子を語っていただきました。

サステナビリティ委員会が社内の
知見を集約する場になっていることに
大きな意義があると考えています

指名委員会委員長 報酬委員会委員 サステナビリティ委員会委員長 酒井 貴子
指名委員会委員長
報酬委員会委員
サステナビリティ委員会委員長
酒井 貴子

⸺まずは取締役会についてお伺いします。社員でも中々実情を知ることができない重要会議ですが、どのような案件を取り扱い、どのように議論されているのでしょうか。社外取締役の皆様も積極的にご意見を述べておられますか?

酒井:取締役会には様々な案件が上がってきますが、中でも特に投資案件、例えば子会社への資金貸付や会社の買収に関する案件などが取り扱われている印象です。そうした案件に対し、私たち社外取締役を含めた委員全員で妥当性や費用対効果を活発に議論しています。2030年に10兆円企業になることを目指している企業のとても大きなエネルギーを感じられる議論です。また、最近はOne NIDECにちなんでグループ全体の指揮系統に係る案件が目立ちます。サステナビリティ委員会や指名委員会に係る案件も徐々に増えてきて、NIDECグループのガバナンスが一層強化されていることが窺えます。
 ニデックの取締役会の特徴として、いずれの案件に関しても対応がとても早いことが挙げられます。議論が済んだ案件は翌月には対応が済んでいて、今度は結果や進捗報告がその月の取締役会に上がってくるのです。これには驚きました。
 そして、永守会長が委員の意見にとても真剣に耳を傾けることにも初めは驚きました。社外や社内の垣根なく、委員の意見を必ず最後まで丁寧に聞いてくださいます。永守会長のこうした姿から、私は議長としての公平性、すなわち委員の意見を公平に取りまとめる姿勢を学んでいます。

⸺非常に活発な、けれどもお互いを尊重した議論が交わされているのですね。その中で酒井取締役ご自身はどういった切り口で意見を述べておられるのでしょうか。

酒井:案件の目的・意義は何か、市場の見通しに基づいて必要かつ適切と判断されたものであるのか、法律・規制に抵触しないことを厳格に調査したか等の論点を提示してきました。これまでの3年間でいわば「ニデック株式会社の事業活動において特に気をつけるべきポイント」を学習しているので、その経験値を活かして有意義な論点を指し示すことができるように心がけています。例えば、企業買収に際してのリスク検討においては、買収先の会計担当者に不安要素がないかを確かめ、問題の未然防止策を強固にしなければならないといったような点ですね。
 一方、問題が発生した際は、再発防止策の見直しと強化の切り口を提示します。各取締役よりそれぞれの専門分野に関わる鋭い指摘がなされ、時間を十分にかけて議論が展開されていきます。

⸺特に社外取締役の方からは鋭い指摘が飛んでくると聞いています。

酒井:社外取締役の皆様はそれぞれ豊かな知見と個性があり、キャリアに裏付けされた異なる視野をお持ちですので、社内の方では中々気づけない点や検討が甘い点を容赦なく深堀りしていきます。そうした指摘を社内の方は嫌な顔をせず受け入れ、必要な対処を即座に採ってくださいます。そのスピード感は本当に素晴らしいです。

⸺それでは次に指名委員会についてお伺いします。昨年の末に発足したばかりの新しい委員会ですが、こちらも自由闊達な雰囲気で運営されていますか?会長である永守や社長である小部に対して、社外取締役の方々が率直な意見を述べる雰囲気が出来上がっているのでしょうか。

酒井:永守会長は日本を代表する経営者です。そういった意味では、委員会にてお会いする際には緊張感を抱いています。しかし、委員全員に「言うべきことは言う」という意識が強く根づいているため、議論が滞ったり、誰かの独擅場になってしまったりすることは決してありません。それこそ副社長の選定プロセスについても、永守会長と小部社長が草案を持ってこられたのですが、指名委員会での議論によって要素をがらりと変えた箇所があるくらいです。令和という新しい時代の会社に相応しい企業のトップとはいかなるものかという命題について、委員全員で忖度のない意見をぶつけ合っており、その末に導き出された結論は確かに会社の動きに反映されています。

⸺世代交代が行われてもNIDECグループが問題なく成長し続けられるよう、人材育成の基盤を築いておられるのですね。

酒井:はい。後継者の選定プロセスが盤石であれば、NIDECグループは今後も若い人たちに参加してもらいながら永くビジネスを続けられるはずだと考えています。NIDECグループの今後についての大切な議論に関わることができて光栄です。この気持ちは他2名の社外取締役委員も同じだと思います。

⸺今回の副社長選定は、NIDECグループの礎となる後継者選定プロセスの第一歩でしたね。副社長候補とは面談なども行われたのでしょうか?

酒井:はい。候補者一人ひとりとオンライン面談を行いました。選定基準を前提にしながら、まずは「ニデックの社風を理解し、それを実践しているか」をチェックしました。次に「新たな時代の流れに乗って思考をアドオンし、会社の将来像を明確に描き出せているか」や「人を統率し、人の成長を促せる素質があるか」について注意を払いました。こうした特に重要なポイントの他、物事に対する真摯さや高潔さ、簡単に動揺しない精神力、ビジネスの先見性などを360度評価の結果なども参考にしながら吟味していきました。一つの才能に特化した方ではなく、全体のバランスに優れた方を選定するために、永守会長や小部社長に候補者の人柄を非常に詳しくヒアリングする機会も頂きました。

⸺グローバルの従業員と共に今後のNIDECグループを牽引できる人を見定めるというのは、非常に難しい仕事ですね。

酒井:想像を超える重責を感じています。だからこそ最後までやりきりたい。社長の選定においても決して悔いが残らないよう、納得いくまで検討を続けます。

⸺委員長を務めておられるもう一つの会議体、サステナビリティ委員会についてもお伺いします。発足からおよそ1年が経過したサステナビリティ委員会ですが、今後どのような役割を果たすべきだと考えておられますか?

酒井:これまでのニデック株式会社は主に自社の成長にエネルギーを注いできました。いわば自社の生き残りを考えてきた50年だったわけですが、これからの50年、100年は国際社会や地球環境の持続可能性も同時に考慮しなくてはなりません。そのような状況の中で、サステナビリティ委員会が社内の知見を集約する場になっていることに大きな意義があると考えています。まだまだ手探りではありますが、委員や運営事務局の皆様の意見を参考にしながら、中長期の企業価値向上の観点における有意義な会議体にしたいと考えています。

⸺最後に、今後の当社に期待することについてお聞かせください。

酒井:NIDECグループは不安定で先が見通せないこの時代に、世代交代という大きな変化を成し遂げようとしています。とても簡単なことではないですが、これを機に時代を超えた礎となるような人材育成の考え方をしっかりと固めていただきたい。階層や職責、年齢、性別、国籍などあらゆる属性に関係なく、一人ひとりが能力を発揮し成長できる仕組みを丁寧に築いていただきたいと思います。

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