2023年度特集 - 統合報告書2023
製品
― 社会変化に適応した製品・サービスの提供 ―
製品の安全性と品質の追求
基本的な考え方
当社はその製品ラインナップの豊富さ、また供給数量の多さから、単なる製品の提供にとどまらず、環境親和性の観点に基づく部品選定や製品の安全性、さらには廃棄やリサイクルに至るまでのあらゆる場面における安全性の全てを保証しなければなりません。当社は安全かつ安心してお使いいただける製品を皆様に提供することで、持続可能な社会インフラづくりに貢献できると考えています。こうした思いの実現には、環境親和性の観点に基づく製品パフォーマンスを高いレベルで維持する必要があり、部品設計時点における材料選定のガイドとなるようなデータベースが不可欠です。
また、車載事業がNIDECグループ連結売上高の20%以上を占める一大事業に発展した現在、自動車業界における全ての顧客の品質ニーズを満たす上で、グローバルに統一された品質保証体制の確立が重要な課題であると認識しています。
2022年度の取り組み
小型モータ事業本部では2021年度に構築が完了した材料選定データベースを活用し、環境負荷の少ない材料の使用を事業本部内で推奨、一部顧客への低鉛材の採用を開始しました。今後さらに本活動を推進し、環境負荷物質の使用低減に貢献していきます。また、昨今問題視されている有機フッ素化合物の使用低減に向けた新規材料開発にも着手するなど、取り組みの範囲を広げています。
車載事業本部では2021年度より品質に係るマネジメント改革を実行し、2025年度までの品質統括組織・体制の確立を掲げて活動してきました。その結果、車載関連事業のみならずNIDECグループ全体の品質保証を統括する横串機能として、グローバル品質統括本部が2023年1月1日付で発足しました。現在、各事業本部における品質保証部門と連携しながら活動しています。
今後に向けて
小型モータ事業本部では先述の材料選定データベースを引き続き活用していくことで、環境負荷物質の低減などといった顧客要請に応じた製品開発を進めていきます。
車載事業本部では引き続き製品安全リスクを低減するため、新規開発品および製造工程の製品アセスメントを100%実施していきます。
そして新たに発足したグローバル品質統括本部では、NIDECグループ各社の品質保証部門が参加する定例の会議体を開催し、各社の品質状況の把握および好事例の全社共有を図っていきます。すでにNIDECグループ全体の製品開発フローにおいて、顧客要請の把握から製品・製造工程設計、量産後のアフターサービスに至るまでの品質保証上の基本的実施事項とそれをガイドする標準文書類の整備を開始しています。ゆくゆくは事業本部や会社の垣根なく、グローバル品質統括本部にてNIDECグループ全体の品質保証を一括管轄できるような体制を築きます。
技術環境・産業構造の変化への対応
基本的な考え方
当社は持続可能な社会の実現に向け、製品や事業活動を通じてグローバルな社会課題を解決するための製品開発と研究開発の促進に取り組んでいます。中でも特に解決を優先するべき課題に関連する事業分野を有望な成長市場「5つの大波」として捉えており、技術開発の強化を通じて全社一丸でそれらの分野における新製品の連打に取り組んでいます。
「5つの大波」の詳細については、以下をご覧ください。
https://www.nidec.com/jp/ir/management/strategy/
2022年度の取り組み
継続的な製品開発や事業活動を通じたCO₂排出削減活動を促進するために、LCA(ライフサイクルアセスメント)に基づき主要製品の環境インパクト、すなわち製品が排出するCO₂量の定量化に取り組みました。また、主要製品の環境対応指標を盛り込んだ技術ロードマップを作成し、製品開発における環境価値の訴求および意識の醸成と浸透に取り組んでいます。
今後に向けて
環境負荷低減に寄与する製品・システム・ソリューションを提供するため、製品の環境負荷低減を考慮した設計や生産技術の開発に努めます。環境価値の追求においては、NIDECグループ内で保持する環境貢献、資源の有効利用に寄与する技術を水平展開し、省エネルギー、省資源、リサイクル(再生材利用)を実現する研究開発を推進します。
会社の持続的成長を支える研究開発
NIDECグループは世界No.1の総合モータメーカーとして、幅広い産業分野への貢献を目指し、グローバルに連携する研究開発拠点を設立しています。また、製品・生産技術の更なる基盤強化、付加価値や環境性能が高い製品の追究など、当社独自技術を高めるための研究所改革にも取り組みました。研究所は、グループの成長を加速させる革新的な製品開発、ものづくりの基盤強化となる生産技術の先進化と高度化、そして社会課題の解決に寄与する技術の創出・発信をミッションとしています。
製品技術研究所は、未来社会のニーズと当社シーズを見据え、持続可能な社会を実現させる新しい製品と技術を生みだす研究開発およびグループの成長を担うモータ応用化分野の研究に注力しています。生産技術研究所は、材料・プロセス革新、DXやAIを活用した最先端の生産技術を開発し、より高効率なものづくりの研究開発を進めています。また、システム生産開発センターは、製品開発のスタート段階から量産までのプロセスを一気通貫するシステムで卓越したものづくりを実現するべく、技術革新を伴う生産工法の開発とその実装支援を実施しています。
プラットフォーム開発センターは、更なる競争力強化のため、次世代電気自動車用駆動モータシステム「E-Axle」の開発を加速させています。そして2022年5月設立の半導体ソリューションセンターは、サステナブルな半導体サプライチェーンの確立や半導体とモータのシナジーによる高付加価値ソリューションの提供を見据えた開発を行っています。
我々は将来にわたり、製品や技術開発によるソリューション提供を通じて社会の発展に寄与できるものと確信しています。NIDECグループには国内外330社超の事業会社があり、多様な技術の集積があります。今後もグループ各社がこれまでに育んできた知の共有と活用を行うことにより、また、更なる研究開発により、新たなイノベーションの創出を目指します。
知的財産の保護・活用
基本的な考え方
「知的付加価値の創造による事業への貢献」を目指し、知財プロフェッショナル組織および国際競争力のある知財ポートフォリオの確保と強化を通じて、知財価値の向上に努めます。具体的な活動としては、プロダクトライフサイクルの各ステージに合ったポートフォリオ管理および権利活用を行っています。また、他社の知的財産権については事前に綿密な調査を行い、その権利を尊重して事業活動を進めています。当社では持続可能な社会の実現に向け、「5つの大波」を中心にSDGsなど社会共通の課題解決のための製品開発を進めています。これらの製品を保護し競争優位性を確保できる知財ポートフォリオを構築するとともに、事業に合わせた知財ポートフォリオへの転換を進めていく考えです。
2022年度の取り組み
「5つの大波」に関わる製品を中心に知財ポートフォリオの構築および転換を進め、その比率を知財ポートフォリオの56%を占める割合まで高めました。特に「脱炭素化の波」における電気自動車用駆動モータシステム「E-Axle」や「5G&サーマルソリューションの波」における水冷モジュール製品といった成長前期に位置する製品などを中心に出願・権利化を進め、市場ニーズに沿った知財ポートフォリオへの転換を進めました。また、当社の特許出願において、外部によりSDGs関係と評価される件数※は年々増加しており、これらは当社がSDGsをはじめとする社会的なテーマに積極的に取り組んできた結果であると考えています。
また、このような活動を継続した結果、2022年にクラリベイト社が実施する「Top 100グローバル・イノベーター2023」に選出されました。本賞は成功率・グローバル性・影響力・希少性という4つの評価軸で知的財産を分析し、世界の革新企業・機関のトップ100社を選出するもので、当社はその中で高い評価をいただきました。
※ LexisNexis社の分析ツール「PatentSight®」による件数
今後に向けて
今後は分析ツール等をさらに活用することで情報収集力および分析力を強化し、それらから得られる知財情報により持続可能な社会の実現に向けた事業活動を促進していきます。また、グループ一体となり競争優位性を確保するための知財ポートフォリオの構築を進める他、こうした活動を積極的に発信し、社会に貢献できる当社の技術力・特許力を社外へアピールしていきます。