2023年度特集 - 統合報告書2023
人材戦略
人的資本の拡充に向けて
当社の事業戦略の特色はM&Aを積極的に行うことです。この特色から従来は買収した会社の自主性を重んじ、グループ内といえども競い合いながら成長する経営(連邦経営)を進めてきました。しかしグローバル化によってあらゆる市場の垣根が取り払われた現在においては、それぞれの会社で培われた技術や人材を繋ぎ合わせ、グループ全体で経営課題等の解決にあたるグループ一体化経営に邁進しています。One NIDECとはグループ間でシナジーを創出しながら成長していく全体最適の経営、つまりグループ一体化経営の実現を目指す上でのキーワードです。
しかし、経営の転換にあたってNIDECグループの強みの根幹が揺らぐことのないよう、創業者・永守重信の価値観あるいは行動様式である「永守イズム」や、従業員の行動指針・規範である「NIDEC Way」を次世代へ継承させていくこともまた重要課題です。これまでに培ってきた競争優位性を確実に引き継ぎつつ、グループの全従業員があらゆる垣根を超えて共に戦える土壌を築くことにより、当社が企業理念の中でビジョンとして掲げる「100年を超えて成長し続けるグローバル企業」そして「人類が抱える多くの課題を解決する世界No.1のソリューション企業集団」を実現することができると考えています。
さらに、ビジョン実現に向けた新たな指針として重要となるのが、会社組織および人材に係る基本的な考え方をまとめた「NIDECグローバル人事ポリシー」です。これは今後展開していく様々な人事戦略や施策において、その基本となる方針・信念を言語化することで、グローバル規模での認識・意思の統一を図るものです。NIDECグループで働く10万人超の社員が公平な仕組みの下で活躍し、事業や会社間を自由に往来できるような制度に係るポリシーもこれに含まれており、ゆくゆくはグループ全体のガバナンス強化に発展させることを計画しています。
NIDECグループにおける人的資本経営の考え方
人的資本経営は、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上に繋げる経営の在り方です。NIDECグループにおいては人的資本経営の根幹に創業者精神をおき、そこから「NIDECグローバル人事ポリシー」といった指針や人事施策を展開しています。それら指針や施策の成果として、会社組織あるいはヒトの側面から会社業績等への貢献に繋がると考えております。2030年度の連結売上高10兆円の達成と、今後100年成長し続けるグローバル企業の実現に向け、人的資本経営に係る上記の考えに基づき指針の整備や施策等の展開を着実に進めていきます。
NIDECグローバル人事ポリシーの考え方と主な人事施策
NIDECグローバル人事ポリシーにおけるもっとも基本的なポリシーは「For Our Future, For Our Dream ― 世界の人々の明日と私たちの夢のために挑戦する組織・人材であり続けること」です。この下に組織・人材開発に関するポリシーと人事制度に関するポリシーをそれぞれ掲げています。
組織・人材開発ポリシー
“Encourage Uniqueness, Respect Team Spirit”
個性を活かし、チームを尊重する
人事上のソフト領域(「人」=個人や自律的な社員集団に関する施策)についてのポリシーです。このポリシーに基づき、ビジョンを共有しながらも多様な視点を取り入れる風土の醸成を図る組織開発施策、個性を磨く人材開発施策を進めています。
人事制度ポリシー
“Reward Based on Contributions without Bias”
先入観にとらわれず貢献に基づいて遇する
人事上のハード領域(「事」=制度や仕組みに関する施策)についてのポリシーです。このポリシーに基づき、会社における人事基盤として必要な基幹制度(等級・報酬・評価)、これらに付随する組織管理・異動ルール・福利厚生などの制度・仕組みを公正・公明・公平な観点から整備しています。
当社人事に関する具体的な活動については、2023年3月期の有価証券報告書にて詳細を開示しています。特にグループ一体化や人的資本経営の確立に向けた施策等に関しては、今後も具体的な活動内容とその進捗を積極的に開示していきます。
また、経営人材を輩出し続けるための仕組みづくりについては、次のコンテンツにてご説明します。特定個人にのみ意思決定権が集中しないような制度と仕組みを整えています。
人事に関する具体的な活動については、下記をご覧ください。
https://www.nidec.com/-/media/www-nidec-com/ir/library/reports/FY22Q4_jp.pdf
次世代リーダーの輩出
創業50周年を迎えた今、次の50年を見据えて後継者計画を新たに構築しています。新たな計画では、NIDECグループ内から選出されたリーダーが経営を担い、集団経営体制により誰がリーダーになっても持続可能な経営を維持できるようにしています。この計画の実行にはグループ内で経営者候補を輩出し続けることが必要です。また、後継者計画等に関する会議体を定め、特定個人に意思決定権が集中しない仕組みづくりにも努めています。
① 2024年4月以降の経営体制(予定)
現代表取締役会長CEO(最高経営責任者)の永守重信は会長職、CEO職を退き、代表権を持たない「取締役グループ代表」という新設の役職に就く予定です。2024年度以後の経営体制が順調に進むよう見守り、時には前面に出て指導役に回り、創業者として会社の業績悪化・成長停滞を見過ごさない体制を築いていきます。現代表取締役社長COO(最高執行責任者)の小部博志は2024年4月から2028年3月まで代表取締役会長職に就き、CEO(最高経営責任者)となります。2024年4月には現副社長である5名の中から1名が社長となり、2028年3月まで代表取締役社長COO(最高執行責任者)を務めます。
※ 株主総会決議を必要とする事項を含むため、今後の予定として記載しております。
② 後継者計画の考え方
役員・幹部クラスはCxO(Chief x Officer)やグループ会社社長の人材プール、CxOやその他役員、グループ会社社長は副社長の人材プール、副社長は社長の人材プールといった具合に、常に各階層のプールに人材を用意しておき、社長候補にふさわしい者が上位のプールへと上がっていく仕組みを構築しています。それぞれのプールに必要な基準を定め、該当する役割の職責・職務を果たせる人材のみを選出します。
従来のトップダウン経営体制から集団経営体制に移行するに当たり、リスクとして意思決定などの経営のスピードが遅くなる可能性が挙げられます。しかし、社長候補者には当社の文化や社員が共有すべき行動指針・規範として定めたNIDEC Wayを理解し、当社の経営にとって重要な事項を理解した人物のみが選出されるため、企業文化の一つである経営のスピードが棄損されることはないと考えています。社長候補者の能力をどのように担保するのか、創業者程の能力を持つ人物はいるのか、というリスクについては、様々な能力を持つ複数の人材が共に経営を行う集団経営体制をとることにより、会社およびグループ全体での安定した能力の維持・向上が見込めると考えています。
当社の経営にとって最も重要なことは当社の企業文化の理解であることを認識し、グループ内から後継者を選出する方法としています。
なお、各階層における候補者選任や人材育成については、主に下記の会議体にて議論しています。
指名委員会
2022年11月5日、取締役会の諮問機関として指名委員会を設置しました。主に、経営層(取締役・執行役員)の選任について議論しています。当社の取締役および執行役員等の選任方針・選任基準・候補者案の決定等に関して独立社外取締役の適切な関与・助言を得ることで、公正性・透明性・客観性を担保し、当社のコーポレートガバナンス体制を一層充実させることを目的としています。
人材開発委員会
社長、副社長、CxO等の役員、人事部を構成員として、2020年度より人材開発委員会を設置しています。主に、重要ポストの後継者計画、および中長期的な経営者候補の育成計画について議論しています。ここでの重要ポストは、ビジネスユニット長やファンクションリーダー等のポストを指します。
③ 社長・副社長等の必要条件
当社は執行役員等の選任方針・選任基準として、以下を定めています。
社長
NIDECグループの製品を通じて世界の快適な社会づくり(ソリューションビジネス)に貢献できる高いリ-ダーシップを持ち、NIDECグループ全体を統制し、指揮することができる者であること。
副社長
ニデック株式会社役員ポストおよびグループ会社社長ポストの中で、「際立った変革のリーダーシップを発揮」かつ、「際立った業績貢献を行った」者であること。社長ポストへのポテンシャルが見られる者であること。
ニデック株式会社役員、グループ会社社長
NIDEC Wayを体現し、NIDECグループを良い方向に導くことができる者であること。NIDECグループの企業価値の最大化に資する人材であり、誰もが認める確固たる実績を持ち合わせている者であること。NIDECグループの業務を遂行するための優れた知識、および経験、グローバルにおける多様性への知見を有する者であること。
※ NIDEC Way=NIDECグループ全体(グローバル含む)で共有し、かつ指針とすべき行動規範