2023年度特集 - 統合報告書2023

財務戦略

今後の更なる成長の礎となる財務基盤を構築すべく、着実に施策を実施 常務執行役員 最高財務責任者(CFO) 佐村 彰宣

経営概況

 当社は今年で創業満50周年を迎えました。1973年の創業以来、幾多の困難に遭遇しながらも、成長分野で急速に売上規模を拡大し、2014年度には1兆円、そして2022年度には2兆円を超えるところまで成長しました。そして、売上成長に伴い、利益についても順調に伸ばしてきました。
 2019年には車載分野でEV化が急速に進展することを一早く察知し、先行投資による待ち受け戦略を展開することにより、中国のE-Axle外製市場においてトップシェアを獲得しました。一方、これまでの数年間はE-Axle事業が収益面で大きな負担となっていましたが、今年度より黒字浮上を果たし、収益に貢献するステージに入りました。
 また、新型コロナウイルスの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻を背景に、原材料市況の高騰やリードタイムの長期化、物流の混乱がグローバルベースで経営に大きな影響を及ぼしました。このため大ロット発注による原材料確保を余儀なくされた一方、急激な需要変動に伴いお客様の在庫調整が長期化する等、当社のバランスシートを圧迫する状況が続いていましたが、このような経営環境も徐々に正常化しつつあります。

夢のある事業ポートフォリオへの転換

 2022年度の当社売上高は2兆2,428億円、営業利益は1,001億円となりました。営業利益については757億円の構造改革費用を計上したことにより、前年度比–41.3%と大幅に減少しています。
 こうした経営環境の下、「Vision2025」で掲げる売上高4兆円、更には2030年度の売上高10兆円の実現に向けて、車載E-Axle事業のみならず、小型EV向けや電動バイク向けモータ等の電動化ビジネス、工作機械事業への新規参入や協働ロボット向け減速機等の機器装置分野での新しい取り組み、「空飛ぶクルマ:eVTOL」向けや成層圏通信プラットフォーム向けのモータといった航空宇宙市場向けのビジネス、さらにはバッテリーエネルギー貯蔵システムや充電ステーションを始めとしたグリーンイノベーション関連の取り組み等、オーガニック成長のみならずM&A戦略も駆使して、将来の成長分野を取り込んだ夢のある事業ポートフォリオへの転換を強力に推進しています。

成長戦略を支える強固な財務基盤の整備

 このような次なる飛躍に向けた成長戦略を支える強固な財務基盤を整備することが財務戦略上の最優先課題です。そのため、昨年度に大規模な構造改革を断行し、今後の事業ポートフォリオに見合った固定費構造への転換を進めました。これをベースに収益のV字回復を実現すると同時に、運転資金効率(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の大幅改善、償却費とバランスの取れた投資の効率化等の諸施策を、One NIDEC/全体最適の視点から強力に推進し、あらゆる成長機会を逃すことのないよう、盤石な資金調達余力を確保していきます。

キャッシュマネジメントシステムによる資金集約のイメージ

資金調達方針とグループ内資金の有効活用

 資金調達においては、中長期の成長原資となる資金を年度毎のキャッシュ・フロー想定、売上通貨と調達通貨のマッチングといったALM(Asset Liability Management)の観点を交えながら、「成長」と「財務規律」の双方を意識し、直接金融と間接金融のバランス、長短バランスの最適化により、財務構造の安定化を図ります。
 また、グループ内資金の有効活用を図るため、日本、中国および米国等、各地域内においてキャッシュマネジメントシステム(CMS)を活用したグループ間での余剰資金活用を継続しています。さらに各国を結ぶCMSを既に導入し、全世界ベースでCMS網を充実させています。また、最近の地政学リスクを考慮して、各国の余剰資金を日本に還流させることにより、リスクヘッジと併せて有利子負債の圧縮に努めています。

ESG経営の進化

 当社は「会社が追求する事業戦略の方向性と世界が求める社会的課題解決への道筋を一致させ、力強く芯のある成長を続けること」こそ、持続可能な経営の在り方であるという基本的な考え方の下、ESG経営の推進を中期戦略目標の一つとして掲げています。昨年、取締役会の内部にサステナビリティ委員会を創設し、委員の過半数を占める社外取締役の知見により長期的かつ幅広い視点から活発な議論を展開しております。真摯かつ地道な議論を通じて当社経営のサステナビリティを高めていきます。

イメージ図

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