2023年度特集 - 統合報告書2023
副社長インタビュー
当社は2023年3月10日開催の臨時取締役会において、2023年4月1日付の副社長執行役員5名の人事を決議しました。新副社長の5名は指名委員会の厳しい審査により、当社役員ポストおよびグループ会社社長ポストの中で際立った変革のリーダーシップを発揮し、かつ業績貢献を行った人物であること、また、社長としてのポテンシャルが見られることが確認されました。
これからのNIDECグループを従業員と共に前進させていくことが期待される5名の新副社長について、会社への思いやビジネスに対する考え方を訊きました。
共通Q&A
それぞれの人物像を深堀りするための5名共通の質問です。
- 1. 当社における経歴を教えてください。
- 2. 当社をどういう会社にしたいと考えていますか?また、当社はどのように変化するべきだと考えていますか?
- 3. 理想の姿を実現するために、今の当社には何が足りないと考えていますか?
- 4. 当社におけるサステナビリティ経営、ESG経営とはどのようなものだと考えていますか?
個別Q&A
それぞれのバックグラウンドや現在の職務に応じた個別の質問です。
質問内容は各副社長インタビューに記載しています。
副社長執行役員 最高技術責任者
小関 敏彦
小関 敏彦
共通Q&A
- 1.非常勤顧問として1年間当社と関わりを持った後、2019年に正式入社しました。当時は生産技術研究所(現 ニデックけいはんなテクノロジーセンター)が設立されて間もない頃であり、私はNIDECグループを横断する研究所の機能と役割を確立する必要がありました。それから現在に至るまで「企業の研究所とは何か」を追究した4年間であったと言えます。今春、研究開発部門を再編し、NIDECグループ全社の様々な技術開発や課題解決を研究開発部門がハブとなり進める体制が整ってきました。
- 2.独自の高度な技術力を持ち、それを絶え間なく進化させていくことが必要だと考えています。これまで当社は顧客要請に対する高い即応力をもってモーターや部品を供給することで成長を遂げてきましたが、今後はそれに加え、モーターを軸として幅広い分野でモジュールやシステム、ソリューションを打ち出す力が必要です。
- 3.モーターの開発と生産で培われた技術を複合化し、高度化して、統合する力が必要です。次の50年も成長を持続し、社会と共生していくためには、社会の変化に柔軟に対応し、技術で社会に貢献できる企業であり続けなければなりません。
- 4.モーターをはじめとするものづくりによる地球環境への貢献と負荷の両方をよく理解した上で、当社に何ができるかを考えていくことが重要です。ものづくりの過程では材料や電力の使用によって環境に負荷がかかりますが、その一方、省電力設計のモーターによって世界で消費される電力を大きく抑えることが出来ます。また、IT機器の冷却に使われる電力は今後ますます大きくなりますが、当社のファンモーターやヒートパイプ、水冷技術を一層向上させることはこの分野の省電力に大きく貢献します。
個別Q&A
- Q.2023年4月より新たに発足した研究開発3部門(製品技術研究所、生産技術研究所、システム生産開発センター)の理念とは?
- A.技術のOne NIDECを実現することです。これまではそれぞれの研究所が製品や生産技術を個別に研究開発していましたが、各研究所の機能・役割を明確にし、さらにそれらをつなぐ機能も加えて、製品設計から生産技術まで一貫した効率的な開発を可能にしました。また、研究所はNIDECグループが有する技術の共有・連携を推進するハブの役割も担っていきます。
- Q.現在特に力を入れて研究している技術は何ですか?
- A.複数の技術を組み合わせたシステム、ソリューション、それを支えるソフトウェアの技術の基盤確立と開発に力を入れています。例えば、これからのEVが「走るスマホ」と言われるように、ハードウェアとソフトウェアが共存して付加価値を生み出すことが要求されています。当社E-Axleに関してもこのような視点から「走る・止まる・曲がる」からさらに一歩進んだコネクテッドカー※を視野に入れて開発に注力しています。
※ インターネットへの常時接続機能を備えた自動車
副社長執行役員 車載事業本部長
岸田 光哉
岸田 光哉
共通Q&A
- 1.2022年1月に当社へ入社し、すぐに欧州所在の車載事業を担当しました。「車の町」として名高いドイツのシュツットガルトを中心として車載事業の発展に備えた地盤強化・構造改革を行っていました。今後の事業発展のために必要な課題の解決や過去の清算を地道に進めた1年間でした。
- 2.モーターカンパニーの枠を超え、「プラットフォーマー」になるべきだと考えています。携帯電話の大手キャリアが今やIT企業にその座を奪われてしまったように、車載業界においてもハードウェアだけでなく、ソフトウェアを含めたプラットフォーム全体を提供できる会社がトップを勝ち取ると確信しています。
- 3.グループ間のシナジーを高めることと、ソフトウェア技術を培うこと。そのために製品の開発・設計環境を整備していくことが必要です。当社にはハードウェアの完成度を高めるための環境が整っています。しかしソフトウェアとなると話は別で、開発や設計のシステムも、知見を持つ人材も、人材を確保するための働き方の選択肢やグループ間の連携もまだ足りない所があります。事業を通じて社内に蓄積された技術とノウハウを駆使すれば、必ずこれらの課題を解決できるはずです。
- 4.次の50年、100年を生き抜くためにも、当社はグローバル&ダイバーシティを前面に打ち出した会社になるべきです。NIDECグループのオペレーションは実に多様な国・地域にわたっており、日本の同業他社を見てもここまでの例はなかなかありません。世界中の人々が人種や国籍、性別、あるいはスキルや専門性などあらゆる属性を超越して共に働いていることの強みを、NIDECグループの中で醸成されている本当のダイバーシティの世界を、私たちはもっとアピールすることができるはずです。
個別Q&A
- Q.前職の経験が活かされた場面はありますか?
- A.前職では長らく携帯電話の事業に携わってきました。国内営業や海外マーケティング、経理、事業戦略・企画、工場の社長などを経験しましたが、車載事業に携わったことはありません。そういう意味では当社に来てから初めての仕事ばかりです。しかし常に現場・現物主義が求められるNIDECグループにおいては前職の経験全てを自然と活用しています。前職で経験した仕事の全てを総括してお客様と対峙していると言えますね。
- Q.生産や開発、営業の現場を様々に巡る中で見えたNIDECグループの強みとは何ですか?
- A.NIDECグループの最大の強みは製販一体です。例えば営業一つとっても、部品の作り方から当社のアドバンテージを説明します。単に製品のスペックを語るに留まらず、お客様と一緒に製造工程にまで踏み込んだ話ができるのです。これはNIDECグループが3Q6Sに代表されるモノづくりの精神を50年にわたって磨き続け、それを業種に係わらず全従業員が受け継いできたことの証左だと思います。
副社長執行役員
小型モータ事業本部長 グループ会社担当
北尾 宜久
小型モータ事業本部長 グループ会社担当
北尾 宜久
共通Q&A
- 1.前職は銀行で法人営業および全社の業績管理を担当していました。2012年に当社に入社し、前職での経験を活かして関係会社管理部(当時)で仕事をすることになりました。主に国内グループ会社を担当してきましたが、M&Aを通じて新たにグループ入りした会社へ会長の永守と共に赴き、当社とグループ会社間のパイプ役を果たしてきました。そして、今年の6月からは小型モータ事業本部長にも就任しました。
- 2.当社の祖業である小型モータ事業本部を担当し、「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」に始まるNIDECらしさと、新たにグループ入りしたグループ会社それぞれの強み・技術が共存する企業集団を目指したいと考えています。一つ一つの会社を完全に吸収してしまうのではなく、あくまでも各社の個性を活かした上で意志のベクトルが合っている状態を実現すべく、グループ会社間の連携を強化しています。
- 3.グループ間の風通しを良くしなければなりません。ヒトやモノ、技術、情報が行き来しやすいようにあらゆる障壁を取り除く必要があります。つまりはOne NIDECの実現ですが、そのためにはNIDECグループの全従業員が当社の憲法である「3Q6S」の考え方をよく理解し、行動し、コミュニケーションを密に行うことが大切だと考えています。
- 4.当社はモータの効率を高め、環境に優しい製品開発を突き詰めていくことで世界の消費電力削減に貢献することが可能です。例えば最近はデータの高速大容量化が進み、電子部品の消費電力と発熱量が極端に増大していますが、当社は2018年にグループ入りしたニデックCCIと共に高性能半導体を効率的に冷却するソリューションを提供することでICT※機器の消費電力削減に貢献できます。加えて、新たなサーマルソリューションとして水冷モジュールの開発にもいち早く取組んでいます。これは今までの排熱システムと比較して半分以下の電力量およびCO₂排出量で冷却が可能です。
※ICT:情報通信技術。デジタル化された情報を通信によってやり取りする技術や、通信技術を使って人と人、人とインターネットが繋がる技術を指す。
個別Q&A
- Q.グループ会社の海外工場立ち上げにも関わったとのことですが、印象に残っているエピソードはありますか?
- A.ベトナムや中国等の海外に工場を建てる際、私も全身全霊で交渉に携わりました。現地の政府関係者と交渉を重ねた結果、単に工場を新設するだけにとどまらず、当社と各国政府との信頼関係を強化することに繋がったと考えています。
- Q.小型モータの領域で今後の柱になる技術・製品は何ですか?
- A.先述の通り、サーマルソリューションが今後の大きな柱になると考えています。これからはデータセンターの高機能化と市場の拡大に起因する莫大な放熱量への対応が喫緊の課題となります。従来の空冷を中心としたソリューションでは対応しきれず、今後は水冷を中心としたソリューションの大幅拡大が見込まれます。AI利用の拡大に伴い成長の一途を辿るHPCサーバー市場や、マイクロプロセッサの出力増加により高まる需要に対して、当社はすでに開発を進めている水冷技術を用いた製品をもって、当社らしいスピード感でビジネスを展開していきます。また、四輪車のみならず二輪車にも押し寄せている電動化の波についても、小型モータ事業本部で培ってきた技術を活用していきます。
副社長執行役員 機械事業本部長
西本 達也
西本 達也
共通Q&A
- 1.当社への入社は2009年です。その後すぐに前職で縁があった日本電産シンポ(現ニデックドライブテクノロジー)の専務執行役員に就任しました。
- 2.「持続的成長を具現していく会社」そして「夢を語り、それを形にする会社」にしたいと考えています。
- 3.持続的成長を具現していくためには「事業の選択と集中」が必要と考えます。グループ内の事業を鳥瞰・分析し、状況に応じて一部を再編成していくことも必要な時期に差し掛かっていると思います。また、持続的成長の具現には事業ポートフォリオをある程度「分散」させることも必要です。これは「事業の選択と集中」と矛盾しているようですが、限られた企業や業種に経営資源を集中させることはリスクが大きく、特定の企業や業種を対象とした大規模投資には慎重な検討が必要だと思います。そして「夢を語り、それを形にする会社」を実現するためには、会長である永守の「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」という基本理念を忠実に守り実行し、永守の軌跡を追随しようとする従業員を育てていくことが肝要だと考えています。
- 4.今後のサステナビリティ経営や社会貢献について、既に取り組んでいる事業でNIDECグループが大きく貢献していることをアピールするのも一案と思います。例えばニデックミンスター株式会社の製缶プレス事業では、リサイクル率の高いアルミ缶を取り扱っています。
個別Q&A
- Q.M&Aを行う際に重視するポイントを教えてください。
- A.既存コア事業の「現状認識」を行い、足りない部分を見定め、それを補える事業体を探します。日本電産シンポ(現ニデックドライブテクノロジー)では、2011年に日本電産キョーリを統合し、プレス機事業に参画しました。その際にM&A戦略を成長のための大きな施策の一つとしました。キョーリという日本市場を基盤とする小型のプレス機事業を手に入れたので、後は欧米に強い市場を持つ中型・大型プレス機が必要だと判断し、現在のニデックミンスター株式会社および二デックアリサ有限会社を買収、その後はこれら企業との相乗効果の高い周辺機器メーカーを買収しました。
そして買収を検討する際に、買収先の経営者と何度も会い、相手を見極めることが大事です。こちらが先方の人となりを知るのと同時に、先方にも「この人たちなら一緒に仕事ができる」と思ってもらうのです。 - Q.続いてPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)におけるポイントも教えてください。
- A.世界中で実施されている多くのM&Aでは、買収側の推進責任者はPMIまでは関与しません。しかし、NIDECグループではこの推進責任者のみならず、トップである永守が買収後のPMIに深く関与します。買収先の経営陣の大幅入れ替え、あるいは社員の大量解雇を行わないのもNIDECグループ流M&Aの特徴です。買収先の既存経営陣に経営権限を与えると同時に、同社全員とNIDECグループの基本経営理念を共有し、必要に応じて投資支援を行い、社員の士気を高めながら買収先の収益性を上げていきます。
副社長執行役員
大塚 俊之
大塚 俊之
共通Q&A
- 1.2004年にグループ会社の一つである日本電産リード(現 ニデックアドバンステクノロジー)へ入社し、その後韓国へ出向、拠点立ち上げに携わりました。2017年に役員として日本に帰国し、2018年4月から4年間同社の代表取締役社長を経験しました。半導体市場の需要サイクルの影響を大きく受け、売上が安定しにくいという特徴がある業界でしたが、高水準の利益を出し続けるための基盤づくりに取り組んできました。その後、2022年5月より現職を務めています。
- 2.次の50年もこれまで以上に成長し続ける、存在感ある会社にしたいです。成長の礎となった企業文化や創業者の精神はそのまま受け継ぎつつ、新たな時代を勝ち抜くために最先端の技術追究や社会要請への追随など時代に則した変化を、すなわち脱皮をしていくことで成長への道が開かれると考えています。
- 3.全体最適を大前提にグループ全体の視点で物事を見ていくことがさらに必要になると考えています。例えば、技術・購買 関連の情報共有や人材流動化、資産の相互有効活用などをもっと進めていくことが必要です。グループ間の垣根を取り払うOne NIDECの動きを加速させていくことでグループ全体の価値を上げていきます。
- 4.我々は企業ですから、業績と株価を上げることが経営の目的であり、経営者としての使命です。この目的や使命と、サステナビリティ経営・ESG経営は相反するものではなく、双方で影響しあい相乗効果を生むものであると考えます。例えば車載用モータ(E-Axel)は脱炭素化に大きく貢献するものですし、脱炭素化はNIDECグループの企業価値向上や新たな市場の創出、ひいては利益創出に繋がります。またNIDECグループが積極的に取り組んでいる人権問題、ダイバーシティ推進、競争力あるサプライチェーンの構築なども同様です。グローバルに事業を展開する企業としてサステナビリティ経営・ESG経営の観点からの事業判断も行いつつ、全てのステークホルダーの利益に繋げていきたいと考えています。
個別Q&A
- Q.日本電産リード(現 ニデックアドバンステクノロジー)の業績を安定させるにあたってのポイントは何でしたか?
- A.先述の通り、同社の主力製品である基板・半導体向けの検査装置は需要に大きな波があります。需要の谷間を補うために検査用治具やプローブカードなど消耗品事業に注力し、M&Aも活用しながらコンスタントに需要が生まれるよう製品ポートフォリオを少しずつ整えました。
- Q.現在はニデックインスツルメンツの代表取締役社長に就任されています。同社の事業基盤を強化するために重視されていることは何ですか?
- A.NIDECポリシーや永守イズムに基づいた経営手法・経営姿勢を浸透させ、それを実践していくことです。この方向性で社員のベクトルを合わせ、事業計画を達成し続けることが、当社の事業基盤を強くし、これからの成長へと繋がっていきます。計画達成には精神論だけでなく政策の綿密な具体化が必要ですが、「気概と執念」は常に持ち続けることを指導しています。