2022年度特集 - 統合報告書2022
コーポレート・ガバナンス ― 強固なガバナンス体制の構築

社外取締役メッセージ

当社は、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を実現するため、ガバナンス強化に注力しています。今回は、6名の社外取締役に、取締役会の評価や今後の課題、日本電産に期待することなどについて語っていただきました。

三歩先の将来を見据え、世界に冠たるグローバル企業へと更に進化することを期待

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報酬委員会委員
佐藤 慎一

現在、新型コロナウイルス感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻等、事業環境は激変しています。また、地球温暖化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が進行する中、ハイパー・グローバリゼーションの時代は終焉し、今後は経済各分野のデカップリングが進むと予想される等、パラダイムシフトの時代に突入したといえます。
日本電産は、長年にわたり永守会長が培ってきた経営方針・理念のもと、機敏にガバナンス改革を推進しています。また、企業経営や労働環境、製品の安全・品質基準等の面においてもすでに一歩進んだ企業であると考えますが、グローバルなパラダイムシフトが起こる中、今後はいかにして「アニマル・スピリット」をもって的確に対応し、時代を先取りするかが重要となります。三歩先の将来を見据え持続的な成長を果たすとともに、環境を含む様々な社会課題にも真剣に向き合い、世界に冠たるグローバル企業へと更に進化することを期待しています。そのためには、取締役会の役割はこれまで以上に重要になります。多角的かつ幅広い視野から世界の潮流を俯瞰し、見逃してはならない課題や論点について、取締役会で精力的に議論・検討することが必要です。取締役会では厳しくも実りある議論が行われています。また、社内取締役は社外取締役からの意見に対して真摯に耳を傾け、質問に対しては意を尽くした説明がなされていると感じています。
引き続き社外取締役として世界的な視野を持って様々な情報を収集するとともに、これまでの経験・知見を活かし、掲げる目標の進捗やガバナンス等を入念に監督していきます。そして、多様なステークホルダーとのコミュニケーションも意識しながら、より一層の企業価値向上のために必要な問題提起や提言を行っていく方針です。

技術革新によるイノベーションが想定される中、今後の社会・市場のニーズに応えることができる日本電産に期待

小松 弥生の写真
小松 弥生

日本電産の取締役会では活発な議論がなされており、社内取締役からの説明や質問への対応は大変明解かつ丁寧です。一方で、コロナ禍におけるリモート開催では説明者と質問者の1対1のやりとりになりがちでしたが、今後の対面での取締役会においては取締役同士の議論も含めてより活発な議論が行われることを期待しています。取締役会の実効性が一層向上するよう、私も積極的に発言をしてまいります。
ESG経営は中期戦略目標「Vision2025」の大きな柱として位置づけられており、取締役会に置いて十分な議論がなされています。日本電産の強みは、事業の根幹であるモータの品質を更に磨き上げていくことが脱炭素社会の実現に直結することです。「Vision2025」に掲げた目標が今後も引き続き着実に実行されていくことを期待しています。また、近年ダイバーシティに関しても外国人や女性の活躍への配慮が特に重んじられています。「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合を30%程度にする」という政府の目標値の達成を目指して、日本電産が取り組む女性の管理職および役員への登用について、今後数字の上で成果として表れてくるものと期待しています。
将来的には、各分野で技術革新によるイノベーションが更に進むと予測されます。日本電産では、既存技術の最適化に取り組むとともに、新たな技術開発にも取り組んでおり、今後の社会・市場のニーズに応えられると確信しています。ニーズに応えていくためにも、積極的な産学連携や適切な知財管理に一層取り組む必要があると考えています。私も、技術革新に関わる情報を可能な限り収集し、社外取締役としての役割を果たしていきたいと考えています。

連結売上高10兆円という目標達成に向け、艱難辛苦に屈することなく前進

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報酬委員会委員
サステナビリティ委員会委員
酒井 貴子

日本電産の取締役会は、各担当役員の説明に対して社外取締役がそれぞれの専門性を活かして積極的に発言・質疑応答を行う等、活発な議論がなされています。また、2022年度より新たな女性取締役を迎え入れる等、グローバルに事業活動を展開する企業としてあるべきガバナンス体制を着実に構築してきていると考えています。
中期戦略目標「Vision2025」初年度である2021年度を振り返ると、日本電産マシンツール株式会社のほかニデックオーケーケー株式会社をグループに迎え入れ、工作機械事業をグループの重要な一部として成長させた点は大きな成果であると考えます。また、半導体の安定的確保へ向けた施策の展開や、柱となる車載事業について専門的な人材を充て大胆かつ確実に戦略を実施している点を高く評価しています。日本電産が認識する「5つの大波」を捉えるためには、中長期にわたる高度な技術開発を必要とします。今後は、特に半導体分野における専門知識を有する人材のさらなる拡充に向けて戦略的に取り組んでいただきたいと考えています。そのためにも私は取締役会に提出されてくる案件について、「Vision2025」を意識しつつ、丁寧に検討していきたいと考えています。
現在はVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代と呼ばれ、先行きの見えない経済環境が続いています。また、日本電産も、ポートフォリオの転換期と世代交代時期が重なり、これまで直面しなかったような難しい局面にあります。一方で目指すべき目標は定まっており、社員全員が同じ目線を持っていると感じています。日本電産はまだまだ若く、そして非常にハングリーな企業です。連結売上高10兆円という目標を達成するため、熱い思いをもって積極的に技術を発展させるとともに、慎重な経営戦略立案を進め、途上生じる艱難辛苦に屈することなく前進しています。私も目標を冷静に見据え、日々の業務に取り組んでいきたいと考えています。

社外取締役として、グローバルレベルのガバナンス実現に向けて注力

監査等委員 報酬委員会委員 山田 文の写真
監査等委員
報酬委員会委員
山田 文

日本電産のガバナンスは、経営会議・Management Committeeによる頻繁な情報共有・戦略立案と適時開催の取締役会における検討および決定の組み合わせにより、グローバルな情報共有および迅速な戦略策定・判断といった相互に両立の難しい要請に応えることができていると考えています。また、取締役会の事前準備も充実しており、取締役会の議論が経営方針に反映されている等、取締役会は実効的に機能していると評価しています。一方で、取締役会の構成メンバーの多様性については外国籍の方を含めグローバル企業の経営経験のある方や、年齢の若い起業関係の方に参画いただくことで更なる多様性の確保を期待しています。
現在、日本電産は中期戦略目標「Vision2025」を推進していますが、次世代を担う社員のインセンティブをいかに引き出せるかが、今後の成長の鍵となります。研究発表会等を拝見しても素晴らしい資質の方々が努力を重ねていますが、これを維持・拡大するためには、国内外を問わず大学・研究所との一層の連携を図り、待遇改善を図ることも必要になります。また、管理部門は今後のグローバル展開やESG関連目標の達成、IR等においてこれまで以上に重要な役割を果たすことになるため、一層の質的充実と入社後の高度教育が重要と考えます。
今後のグローバル展開の在り方としては、各国・地域への配慮が一層求められると考えます。単に各国・地域の慣習・慣行に合わせるといったことではなく、それぞれの事情や文化、労働条件、展開に伴う社会的・環境的影響をよりきめ細かく分析し、グローバル企業として求められる社会的責任を果たした形での事業展開を進めるべき段階にあるものと考えます。今後とも社外取締役として、グローバルレベルのガバナンス実現に向けて注力していきたいと考えています。

世界規模の環境・社会問題解決に貢献することを期待

監査等委員 サステナビリティ委員会委員 赤松 玉女の写真
監査等委員
サステナビリティ委員会委員
赤松 玉女

現在、社会における多様性の受け入れ・尊重は、加速度的に進んでいます。女性活躍はもちろんのこと、障がいを持つ人々や国籍、LGBTQといった違いに目を向け、可能性を見出そうという時代にあります。私は芸術分野における人材育成が専門であり、日本電産の事業分野とは異なった経験を有しています。そのような私にも企業理念や方針、取締役会の審議事項について等、詳しく丁寧なご説明の機会をいただいており、日本電産にはすでに多様な価値観を取り入れようとする文化が根付いていると感じています。今後、日本電産が更にダイバーシティを推進していくためにも、諸外国の歴史・文化にも明るい役員の採用に努めていただきたいと考えています。
そして、こうした多様性のほか、地球環境問題は未来の課題ではなく現実的な問題となっています。私はサステナビリティ委員会の委員として、若い世代にとって希望がもてる未来を育むために必要なことを、日本電産とともに検討していきたいと考えています。そして、これらを社内外に示すことは、今後少子高齢化の進む社会の中で、将来への不安を切実に感じている人々に対して働きたい職場、選びたい企業としての存在感を示すことになり、企業の持続可能性にも繋がっていくと考えます。
企業価値向上とは、生産性向上や業績拡大だけではなく、世界中の従業員や地域社会の人々から、誇りに思ってもらえる企業であり続けることでもあります。日本電産が世界中の従業員が目指す方向性を理解し、各々の仕事に取り組める職場環境を整えることができれば、自ずと世界規模の環境・社会問題解決に貢献できるものと期待しています。

責任感とモラルを持ちながら責務を果たし、ESG活動や無形資産の承継をサポート

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監査等委員
サステナビリティ委員会委員
渡邊 純子

日本電産のコーポレート・ガバナンスは、様々な課題を残しながらも、経営者の判断やPMI (Post Merger Integration)への注力、内部統制システムの整備等により、これまでの成長において適切に機能してきたと評価しています。そして、日本電産はこれからも事業・組織ともにグローバルレベルで拡大を続けていくことから、今後も一層のガバナンス体制強化に取り組むことが必要となります。ガバナンス体制を強化する要素の一つとして、例えば公認会計士等の資格を有する方の選任や外国人の登用等、取締役会メンバー構成の多様化をより加速させるような動きを期待しています。
そして、何よりも重要な点としては、取締役の個々人が責任感と高いモラルを持ちながら監視・監督機能を果たすことであると考えています。私自身も監査等委員である社外取締役の立場として、社内の方々とのコミュニケーションや、社内外のステークホルダーの利害を踏まえた監視機能や説明責任、透明性等を特に重視した活動に努めていきます。現在、企業や個人の行動変容を促し、国際社会が目指す持続可能な社会の実現にも貢献できるものとして、ESG投資が急速に広がりつつあります。長期的な企業成長と社会への貢献、企業価値向上を目指す上でESG活動は重要であり、日本電産にとっても必要不可欠な取り組みです。こうした動きに伴い、日本電産がこれまで培ってきた無形資産を将来に承継していくことも企業価値向上のために重要となります。私は、無形資産の承継という点についても、社外の立場および外部の客観的な視点から積極的に提言を行い、自身の責務を果たしていく考えです。

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