2022年度特集 - 統合報告書2022
人材
優秀かつ多彩な人材の確保・育成
国際競争力が高い人材の確保・育成
基本的な考え方
当社グループは2030年度連結売上高10兆円を達成し、目指す姿である「100年を超えて成長し続けるグローバル企業」「人類が抱える多くの課題を解決する世界No.1のソリューション企業集団」を実現するため、国際競争力が高い人材、すなわちグローバルに活躍できる人材の確保・育成が不可欠であると考えています。そのような人材を特に「3P(Proactive, Productive, Professional)」「問題解決力」「異文化コミュニケーション力」の3つが高い人材と定義し、これらの能力を高いレベルで発揮できる人材を育成しています。
現在、海外の現地人材や国内グループ会社を含めて優秀な人材の可視化・育成を目指してタレントマネジメントに取り組んでおり、優秀な人材を一元管理するタレントマネジメントシステムの導入も進めています。さらに、2030年度連結売上高10兆円という目標に向かって挑戦意欲を維持し、活躍する人材の創出に向けて、仕事の結果を正しく評価するグローバル水準の新人事制度を導入するなど、国際競争力が高い人材の確保・育成に向けて今後も各種施策に注力していく方針です。
グローバル人材の育成
目指す姿の実現を担う人材の育成として、2016年度にグローバル経営大学校を、2017年度にはその候補生を早期に育成する次世代グローバル経営人材育成プログラムを開校しました。これまで世界14カ国(日本、米国、カナダ、メキシコ、中国、タイ、フィリピン、シンガポール、インド、イタリア、ドイツ、フランス、イギリス、ポーランド)もの国から受講者が選ばれており、受講後は各地でグローバルリーダーとして活躍しています。
また、グローバル人材を安定的に生み出し続ける仕組みとして、人材パイプラインの確立にも取り組んでいます。2020年度より海外も含めた当社グループの重要ポストのサクセッションプラン(後継者育成計画)を議論する場として、「人材開発委員会」をスタートさせました。「人材開発委員会」は年に4回開催され、経営幹部がサクセッションプランの妥当性を議論しているほか、次世代の幹部候補となりうる人材を発掘し、戦略的な早期育成の取り組みも強化しています。
ダイバーシティの推進
基本的な考え方
当社グループは、多様性を競争力の源泉として認識しています。グローバルに事業を展開していく中で、個人が持つ違いを尊重して受け入れるとともに、その違いを最大限に活かすことによって、日々目まぐるしく変化しているビジネス環境や顧客ニーズへ効果的に対応できると考えています。世界各地に開発・生産・販売・研究拠点を持つ当社グループでは、多様な人材が活躍しています。個人の属性や価値観にかかわらず、能力と意欲を持つ人材の採用に努めるとともに、その潜在力を存分に発揮できる人材育成・登用や職場環境づくりに取り組んでいます。働き方の側面では、2021年度に在宅勤務の対象者・取得回数の制限を恒久的に撤廃し、全社員が必要に応じて活用できるよう制度の拡充を進めました。また、取締役会の女性比率や外国籍役員数の向上にも取り組んでいます。例えば、2022年4月には外国籍役員2名を登用しています。今後も経営層から現場の従業員に至るまで、会社全体での多様性確保と推進に努めます。
女性活躍推進の取り組み
労働安全衛生・健康経営の推進
基本的な考え方
労働人口の縮小は世界的な社会課題であり、日本においても個人の健康管理を企業がサポートすることで限られた労働資源を大切に扱い「人材価値」を最大化する取り組みが重要となります。そのため、社員のモチベーション・生産性が向上する職場環境づくりが不可欠です。
当社グループは、会社と社員の協力のもと、職場における社員の安全と健康を確保し、社員がその能力を十分に発揮できる職場環境の形成に取り組むことを、CSR憲章に掲げています。安全快適な職場環境の整備、社員の安全と健康の増進をテーマに、健康経営に取り組んでいます。
2020年6月には「健康宣言」として健康経営の強化を宣言し、2022年3月には経済産業省が主催する「健康経営優良法人 2022(大規模法人)」に2年連続で認定されました。加えて、社内組織横断的に構成された「健康推進委員会」を設立し、健康管理・増進の仕組み強化のほか、産業医による健康セミナー、全社員を対象とした健康意識調査を実施し、健康リテラシーの向上に努めています。さらに、2021年度には3ヵ月単位で禁煙時間を設定、それを段階的に拡大していき、国内事業所の敷地内完全禁煙を達成するなど、健康経営の重要性を認識し取り組みを進めています。今後も健康経営推進により、競争力・企業価値向上につなげていきます。
安全
新設の事業所やM&Aにより加わった拠点を含む当社グループ全拠点で、社員の安全確保を最優先の課題と位置づけています。国内事業所では全事業所の安全確保に向けた施策を審議する安全衛生委員会を組織しています。今後も安全な職場環境を維持し、重大災害ゼロを目標としていきます。
2021年度の取り組み
安全活動確認およびリモート安全点検に係る両KPIともに、当初の目標を達成しました。
今後に向けて
新型コロナの影響が長引いていますが、Webカメラを利用したリモート安全点検により従来以上の頻度で製造工程およびファシリティを確認し、引き続き労働災害防止に努めていきます。
新型コロナウイルス感染症への対応
当社では従業員、取引先の安全確保を最優先に考え、社内外への新型コロナウイルス感染症の感染防止に努めながら、継続的な製品およびサービスの提供に取り組んでいます。2020年1月に危機管理対策本部を立ち上げ、感染者発生時の対応手順の整備、事業所内の感染防止対策の策定と徹底、各国の医療体制や感染状況に応じた方針策定を実施しています。感染防止対策として、在宅勤務制度や時差勤務制度を最大限活用したほか、感染者発生時の影響を最小限にとどめるために事業所内のゾーニング、食堂の一時閉鎖、感染者の接触者に対する厳格な管理等を状況に応じて行っています。また、国内の従業員、家族を対象とした職域接種を実施するなど、従業員が安心して業務遂行できる環境を整えました。今後のウィズ・コロナの環境下においても、関係各所と連携しながら、当社グループ一丸となって迅速かつ適切な感染症対応を続けていきます。
健康
社員の心身の健康推進、および当社で最大限活躍できる職場環境づくりを目指し、健康推進委員会を組織しています。各職場に応じた取り組みができるよう、各事業所に健康推進の担当者を置くとともに、健康のエキスパートである産業医や健康保険組合とも連携し、会社一体となって健康経営を推進しています。
人権の尊重・適正な労働慣行の浸透
基本的な考え方
当社は、グローバルな事業環境における人権への配慮の重要性を認識しており、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」「国連グローバル・コンパクト」「国連世界人権宣言」「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」をはじめとする国際的ガイドラインを支持し、人権を取り巻く課題の多様化に対応しています。日本電産グループCSR憲章では「人権の尊重」を掲げ、またCSR憲章を補完する「NidecグループCSR行動宣言」では、強制労働の禁止、児童労働の禁止、差別と非人道的な扱いの禁止、適切な賃金の保証、労働時間と休日・休暇の保証、結社の自由と団体交渉権の保証を規定しています。
現在、当社グループは43の国と地域で300を超える事業所を有し、その何倍もの取引先が各国・地域で当社の事業活動を支えていますが、重要な生産工場およびそのサプライヤー工場の多くが人権に関する法整備が不十分と言われる国々で操業しています。近年、職場で発生する労働・倫理問題の多くが人権管理の不備に起因すると言われており、事業所内での人権問題はもちろんのこと、サプライチェーンで発生する労働・倫理問題に関しても自社の責任と認識しています。2021年11月にはESGマテリアリティ取り組みテーマの一つである「サプライチェーンを含む人権方針の明確化と浸透」の対応として、当社の人権尊重に関する姿勢と取り組みを整理し、「日本電産グループ人権基本方針」を策定しました。本方針を元に人権を尊重する責任を果たし、多様な人材が活躍することができる安全・安心な職場づくりを進めていきます。
具体的な取り組み
人権リスク・アセスメントについては、当社従業員の70%以上が集中するアジア地域を最重視し、重点的に取り組んでいます。アジアの主要な生産工場を対象にRBA※行動規範を参照した自社基準に基づく監査を第三者認証機関との提携によって定期的に実施しており、従業員の人権に関しては「雇用の自由選択」「若年労働」「労働時間」など7側面に設けられた監査項目を厳しくチェックしています。
※ RBA(Responsible Business Alliance)は電子業界のサプライチェーンにおける社会・環境・倫理的課題の解決を目的として設立された団体
2021年度の取り組み
KPIに掲げている社員の労働時間管理についてマイクロマネジメントを行い、関係各所への報告・連携を適切に実施しました。また、時間外労働の管理について、上司・部下のコミュニケーションを取った上で時間外労働の実施を行うよう日々の音声アナウンスの展開をはじめ、改めて社員に周知し、徹底を図りました。
今後に向けて
引き続き労働時間把握と労災発生未然防止を徹底し、売上1兆円超え企業としての社会的責任を果たしていきます。