2022年度特集 - 統合報告書2022
サステナビリティの実現に向けて
基本的な考え方
当社が考える持続可能な経営の在り方とは、「会社が追求する事業戦略の方向性と世界が求める社会的課題解決への道筋を一致させ力強く芯のある成長を続けること」です。
当社はかねてより、これまでの経営全体の長短を新たな視点から見極める必要性を認識していましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大は不確実性への備えを一層強く意識するきっかけとなりました。そこで当社事業ごとの持続性を担保するべく社内外のステークホルダーによる中長期の展望を軸に5つのマテリアリティを特定し、「脱炭素社会の実現」「人権の尊重・適正な労働慣行の浸透」「国際競争力が高い人材の確保・育成」など、全15項目の取り組みテーマを明確にしました。また、各項目において積極的かつ持続性のある改善活動を実行するための各種体制を整備しています。例えば、改善活動の進捗を定期的に確認するためESGマテリアリティSteering Committeeを組織したほか、将来起こり得るリスクへの対処を速やかに実施すべく財務・非財務領域の両方にわたるリスクマネジメント体制を構築したことなどがあげられます。また、マテリアリティへの対応を支える礎として、2008年の制定より現在まで当社CSRにおける最重要指針となっているCSR憲章や、社会的責任を果たすという観点から従業員の取るべき選択を明文化したCSR行動宣言など、あらゆる規程・文書が存在しています。
今後も事業の持続性を高めていくために、当社の理念と経験の全てを用いて効果的なサステナビリティ戦略を打ち出していきます。
マテリアリティ対策推進体制
当社が特定した5つのマテリアリティには全部で15個の取り組みテーマが付随しており、それらは活動の始動時期に応じて3つのPhaseに分類されています※。それぞれの活動が確実かつ効果的に実行されていることを確認するための仕組みの一つとして、当社はESGマテリアリティSteering Committeeを定期的に開催しています。この委員会はManagement Committeeの直下に設けられた会議体として毎月開催され、当社のほぼ全ての役員がそれぞれの活動テーマについてPhaseごとに進捗や課題点などを報告し合います。なお、報告はそれぞれの活動テーマの担当役員より直接行われます。この場で議論・決定された事項は直ちに活動計画に反映されます。
※ 「日本電産のマテリアリティ」ご参照
サステナビリティ委員会の創設
2022年度、ESGマテリアリティSteering Committeeを管理・監督する会議体として取締役会の内部にサステナビリティ委員会を創設しました。本委員会の運営を通じて、より長期的かつ幅広い視野を確保し、「100年を超えて成長し続けるグローバル企業」という当社の理想の姿からバックキャストで現状の課題を抽出し、取り組みを推進することで、当社経営のサステナビリティを高めていきます。
サステナビリティ委員会の意義
本委員会は取締役会が経営のサステナビリティに最終責任を持つための、当社にとっての新しい仕組みです。社外の意見を経営判断に反映できるよう、5名の委員は社外取締役を中心に構成されています。委員たちが本委員会を通じて執行組織(ESGマテリアリティSteering Committee)のモニタリングを行うことで、当社のサステナビリティ経営の推進を図ります。
サステナビリティ委員からのメッセージ
サステナビリティ委員となった取締役5名の内、社外取締役の3名に抱負を語っていただきました。
社外取締役 酒井 貴子 委員長
日本電産の扱う多くの製品が省エネルギーなど環境親和型の性質を持ち、また、多くの事業所で積極的に再生可能エネルギーの導入を進めたり利用を開始したりしています。いわば、日本電産の事業活動そのものが環境保護に繋がる仕組みを有しています。この度の拝命は、そうした日本電産が持つ影響力の観点からも、未来世代に地球環境を引き継ぐための重大な役割の一端を担うことになると意気込んでいます。委員長として各委員の意見を大事にしながら、企業価値向上への道筋をつくっていきたいと考えています。
社外取締役 赤松 玉女 委員
2030年の社会、2050年の地球のために、積極的に社会課題に向き合う委員会の設立は、時宜に適ったことであると思いました。私は、人類の歴史とともに世界中のあらゆる文化に根ざして脈々と途切れることなく繋いできた芸術という分野における人材育成に携わってきました。そうした立場から、生産・消費といった市場の価値にとらわれず、若い世代にとって希望がもてる未来を育てていくために必要なことやできることを考えることができたらと思います。
社外取締役 渡邊 純子 委員
近現代の経済社会においては、企業活動が環境問題を引き起こしたり、労働・人権、公正な取引といった面で特定の層に対するしわ寄せを生じさせたりしています。このような地球規模での悪循環を変えていくためには企業活動の変化が特に重要であり、グローバルに事業を展開する日本電産の変革力に期待するところは非常に大きいです。
サステナビリティ委員として委員会で活発な議論をしながら、当社が目指すべき目標と具体的な課題の設定、指針作り、達成に向けたスケジュール検討等、一つ一つの活動に着実に取り組んでいきたいと思います。