技術戦略

サステナブルな半導体サプライチェーンを確立

　現在、半導体をいかに安定的に調達するかが企業の生産・販売を左右する状況が続いており、今後世界のグリーン化やDX（デジタルトランスフォーメーション）化が進行するに連れて半導体使用量は更に伸びていくことが想定されます。
　連結売上高が10兆円となった際には、当社は半導体を1兆円調達する必要があると見ています。これは、大手半導体メーカーの年間売上高に匹敵する水準となります。半導体は、電気自動車用駆動モータシステム「E-Axle」をはじめとして、あらゆる当社製品に必要となってくるパーツであり、事業部門・製品を問わず「半導体の安定調達なくして、事業拡大なし」と言えます。そのため、半導体を中長期的かつ安定的に確保することは、当社の2030年度連結売上高10兆円の目標達成に向けて、クリアしなければならない重要な課題となります。
　こうした中、当社は2022年5月に半導体ソリューションセンターを設立しました。当センターは、サプライヤーとの戦略的パートナーシップを築き、あらゆるリスクに対応できるサステナブルな半導体サプライチェーンを確立することで、当社製品の安定した生産と供給を実現することを目的としたものです。グループ内の半導体に関わる課題を特定の部門・製品に限らず、全方位的にフォローすることをミッションとしています。
　今後の半導体戦略に関する具体的なアクションは、以下を計画しています。

STEP1： Nidecグループサプライヤーとの集中購買

　現在は当社グループ内で統一されていない半導体の調達を、グループ集中購買にシフトし、スケールメリットを最大限発揮できる体制へシフトします。当社が明確なビジョンを持って事業拡大を推進しており、高い売上成長率が期待できることを含め、当社へ半導体を納入するメリットをサプライヤーの皆様には改めてご認識いただき、戦略的パートナーとなる半導体サプライヤーを選定していく方針です。2022年5月の半導体ソリューションセンター設立に際して、サプライヤーの皆様から多くの反応をいただき、戦略的パートナーの選定に向けて前進できたと考えています。

STEP2： グローバルRFQ（Request for Quotation）への挑戦

　RFQは、半導体サプライヤーが提供する製品を当社が購買するのではなく、当社が必要とする半導体のスペックを定義し、それに対して最善の回答をいただけたサプライヤーを選定することで、半導体の安定供給体制の構築を目指す取り組みです。欧米企業では半導体サプライヤーに対して日常的に行われているRFQの発行や回答の受領、その後の交渉結果としての長期契約締結といった半導体調達の流れは、日本企業では行われていないと認識しています。こうしたRFQの実施によりサプライヤーとの良好なコミュニケーションを構築することで、価格交渉等に割く時間の低減につながります。また、精度の高い需要見通しを半導体サプライヤーに示すことが可能になるため、半導体メーカーの投資負担軽減、すなわち半導体コストの低減につながる等、Win-Winの関係が構築できると考えています。

STEP3： 半導体とモータのシナジーによる高付加価値ソリューションの提供

　半導体を安定的に調達することが可能になることで、「インテリジェントモータ®」によるソリューション提供が見えてきます。「インテリジェントモータ®」とは、当社が開発した小型コンピュータを内蔵したモータであり、無線ネットワークで簡単に制御可能であるとともに、位置・速度・トルクなど様々なモータ情報を取得することができます。これにより、旧来の製品では実現できなかった多様なソリューションが顧客に対して提供可能になります。
　例えば、DXによってクラウドストレージ容量は飛躍的に増大しましたが、電力を多く消費する課題があります。これに対してエッジコンピューティングで分散化を実施するというソリューションが考えられ、この分野で「インテリジェントモータ®」が大きく貢献できると考えられます。この例に限らず、車や家電等あらゆる分野でコンピューティングの流れは加速しており、「インテリジェントモータ®」によるソリューション拡大は大きな可能性を秘めていると考えます。
　私自身も、当社グループの中での半導体ソリューションに対する期待の大きさを実感しており、大きな希望と使命感を抱いています。「すぐやる・必ずやる・出来るまでやる」の当社精神のもと、半導体ソリューションを推進すべく、今後のミッション遂行に全力を尽くしてまいります。

※ インテリジェントモータ®
日本電産が開発した小型コンピュータを内蔵したモータです。無線ネットワークで簡単に制御可能であるとともに、位置、速度、トルクなど様々なモータ情報を取得することができます。