2022年度特集 - 統合報告書2022

中期戦略目標の概要

2030年度連結売上高10兆円達成に向けたマイルストーンが新中期戦略目標「Vision2025」です。2022年度に連結売上高を2兆円に拡大し、2025年度には4兆円に引き上げる計画であり、既存事業の成長分野に軸足を置いた自律成長に加えて新規M&A(売上高1兆円程度)による増加を見込んでいます。

Vision2020の振り返りと、Vision2025への道程

2020年度の連結売上高は1兆6,181億円となり、2015年度~2020年度における中期戦略目標「Vision2020」の目標値であった連結売上高2兆円は未達となりました。Vision2025では、Vision2020の目標であった連結売上高2兆円を2022年度までに達成した上で、2025年度に同4兆円を目指す形となります。Vision2025の特徴としては下記があげられます。

  1. 1.生産性向上の目標への組み込み:従業員一人当たりの売上高と営業利益を2022年度までに3割増、2025年度までに倍増を目指します。
  2. 2.ROICの目標への組み込み:Vision2020では経営指標としてROE(株主資本利益率)を採用していましたが、Vision2025ではROIC(投下資本利益率)15%以上を最終目標として設定しています。
  3. 3.ESG目標の設定:新たにESG関連項目を目標として組み込みました。カーボンニュートラルへの取り組み、ガバナンス強化を明示的に目標に採用しました。
連結売上高2兆円目標は、2022年度の達成に再チャレンジ

新中期戦略目標の骨子 1

利益ある成長への拘り

2025年度連結売上高4兆円(うち、新規M&Aで1兆円を見込む)の達成は高い成長率を要求しますが、単に売上を伸ばすだけではなく、「利益ある成長」に日本電産は拘ります。Vision2020のROE (株主資本利益率)から、Vision2025ではROIC(投下資本利益率)を指標として採用し、2022年度でROIC10%、2025年度で同15%を目標値として設定しています。
既存事業については、事業軸と地域軸によるマネジメント(製品を事業および地域別にマトリックス化することでビジネス機会を可視化)で成長機会を追求しつつ、ROICを評価軸とすることで資本効率の最適化を図っていきます。新規買収(M&A)の主眼は当社の戦略上必要となる技術、商流の補完にあり、単に売上を取り込むだけではない、当社経営戦略とのシナジーがあり、最終的に当社全体の経営指標改善に寄与する案件を重視しています。

成長戦略(自律成長+M&A)と、資本収益性向上の両建てによる取り組みを展開

新中期戦略目標の骨子 2

事業ポートフォリオマネジメント

2020年度1.6兆円から2025年度4兆円の連結売上高目標(うち、新規M&Aで1兆円を見込む)に向かって、成長事業に軸足を積極的にシフトしていきます。
車載部門では、今後市場の大幅拡大が見込まれる電気自動車用駆動モータシステム「E-Axle」において2025年度の受注台数は350万台に達しており、同年度までに数千億円規模の売上増加を見込んでいます。その他にも電動パワーステアリング用モータなど、受注ベースで10%を超える年率売上成長が期待できる製品群も多く、車載事業は全体としても高い売上高成長率が見込まれます。
精密小型モータ部門では、長年当社業績を牽引してきたHDD用モータの大幅な成長が見込めない状況となっています。電動化による事業機会の拡大が予想される小型EV向けモータ、電動二輪車向けモータなどのモビリティ分野に経営資源をシフトし、もう一つの成長分野である熱マネジメントシステムと併せて売上成長への貢献が期待されます。

成長事業への積極投資による高い成長率を実現

新中期戦略目標の骨子 3

トップライン伸長への打ち手

2025年度の連結売上高4兆円、その先の2030年度連結売上高10兆円達成に向けては、より市場規模の大きい事業分野へのシフトが必要となります。成長分野への事業シフトに加えて、顧客から見てインテグレーションレベルの高い製品群を提供することで、より大きな規模を持つ市場へのアクセスや製品単価の上昇が可能となります。
車載事業を例に取ると、モータ単体(デバイス単品)の提供からEPSパワーパックや電動オイルポンプモジュール(モジュール)、 E-Axle(システム)、EVプラットフォーム(ソリューション)とインテグレーションレベルが高まるにつれて、さらに付加価値が高い市場へのアクセスが可能となると考えられます。
当社は各事業部門でこうした移行プロセスを進めることで、 2030年度連結売上高10兆円の達成に必要な成長機会を確保していきます。

事業領域の拡大で、連結売上高10兆円体制に向けたビジネスモデル変革に挑む

新中期戦略目標の骨子 4

EV用トラクションモータ基本方針

EV業界を取り巻く環境は日々変化しており、世界各国での環境規制強化によるEV化の推進に加えて、異業種からの参入やファブレスメーカーの登場など、大きな変化が起きています。
当社では主にバッテリー価格の低下によるEVの価格低下から、 2025年以降爆発的に台数が伸びることを想定しています。すでに2025年度のE-Axle受注台数は400万台に達していますが、2030年度には販売台数が1,000万台に達すると予想しています。
現状ではまだ自動車メーカーの内製が多いE-AxleもEV台数増加とともに外製へのシフトが進むと考えています。当社では市場拡大に向けて2025年度までに連結ベースで総計1兆円の投資(設備投資とM&A)を実施し、E-Axleの価格競争力の向上や生産体制の整備を実施する予定です。また、新規参入メーカーを中心にEVのファブレス生産も増加している現状を踏まえ、鴻海グループとの合弁会社設立も検討しています。

自動車業界の枠に収まらないゲームチェンジャーとしてEV時代を牽引する

新中期戦略目標の骨子 5

ROIC経営

Vision2025ではROIC(投下資本利益率)が新たな経営指標として盛り込まれ、各事業部門の戦略に沿った数値目標に基づき具体的な改善活動を実施します。例えば、精密小型モータ部門と車載部門では顧客層が異なり、ビジネスのリードタイムにも違いがあるため、ROIC改善に必要な施策や、施策が成果を生むまでの時間軸も異なります。部門ごとの特徴を踏まえた改善活動を実施することが重要です。
ROICの向上には「利益率の向上」および「投下資本の最適化」が必要なため、前者であれば原価率の改善や工場稼働率の向上、後者であればCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮化、生産自動化の推進といった具体的な施策を事業部門ごとに実施していきます。

部門それぞれの事業戦略に沿ったROICターゲットを定めて改善活動を実施

新中期戦略目標の骨子 6

カーボンニュートラル宣言

Vision2025で新たに「カーボンニュートラル宣言」を目標に盛り込みました。①2040年度までに事業活動(Scope 1,2)をカーボンニュートラル化 ②サプライチェーン排出量(Scope 3)の削減計画を2025年度までに決定という2つの柱から構成されます。
売上高の増加に比例してエネルギー消費量は増加が想定されますが、①省エネルギーの推進 ②電源構成の再生可能エネルギーへのシフト ③カーボンオフセット投資などで、ネットでのCO2排出を2040年度までにゼロ(Scope 1,2)とすることを計画しています。再生可能エネルギー導入比率については、2025年度で40%、2030年度で80%を予定しています。

2040年度までに事業活動(Scope 1,2)をカーボンニュートラル化 サプライチェーン排出量(Scope 3)の削減計画を2025年度までに決定

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