2021年度特集 - 統合報告書2021
財務戦略
2030年度10兆円の連結売上高目標に向けて、2021年6月に代表取締役社長執行役員である関がCEOを務める創業以来の大きな転換期を迎えました。2021年7月には2025年度に連結売上高4兆円を目標とする新中期戦略目標「Vision2025」を発表し、成長投資と財務規律の両立やESG経営の推進等、財務・非財務両面において日本電産グループのさらなる挑戦、変革を続けていきます。
新中期戦略目標 「Vision2025」
連結売上高目標
2020年度を最終年度とする中期戦略目標「Vision2020」において、連結売上高2兆円の目標は未達となりました。この目標を2022年度に達成し、さらに2030年度同10兆円に向けて、2025年度に同4兆円を目標とした計画が新中期戦略目標「Vision2025」です。
2025年度連結売上高目標4兆円のうち、3兆円は自律成長、1兆円は新規M&Aによる成長を見込んでいます。新規M&Aを除いた連結売上高3兆円の2025年度での達成には15%程度のCAGR(年平均成長率)が必要となりますので、成長分野への事業ポートフォリオシフトが重要な施策となります。
電気自動車用駆動モータシステム「E-Axle」では2025年度の受注台数はすでに350万台に達しています。EV業界では、世界各地域の環境規制強化やファブレス化、新規参入企業増加等の構造変化が起きており、大きな事業成長機会があると考えています。また、精密小型モータ部門においても小型EVや電動二輪車向けのモータを新規ビジネスとして早期の収益貢献を見込んでいます。
2025年度に連結売上高4兆円を達成し、2030年度同10兆円に向けた強固な橋頭堡とするべく、日本電産グループ一丸となって取り組んでいきます。
財務目標
2025年度に向けた新中期戦略目標「Vision2025」では、「Vision2020」で採用していたROE(株主資本利益率)に替わり、ROIC(投下資本利益率)を新たに経営目標として採用しました。2020年度実績であるROIC7.8%から、2022年度では10%、2025年度においては15%を目標としています。
ROICを経営指標として採用した理由は、「利益を伴う成長への拘り」を重視し、「自律成長+新規M&A」と「資本収益性向上」の両建てによる成長を目指すとの考えからです。 ROIC目標は事業部門ごとにブレークダウン目標を設定し、日々の改善活動を推進します。
投資については、2025年度に向けて、累計1兆円超の成長投資(主に設備投資とM&A)を実施する見込みとしていますが、売上高設備投資比率は2025年度で5%程度を目安として考えています。CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)については、2020年度実績では75日弱でしたが、原材料価格高騰や部材の供給混乱等に伴う生産継続リスクを最小化しながら、引き続き在庫適正化を中心としてCCCの改善を進めていきます。
成長事業への投資、新規のM&A等に必要な資金の調達については、グループ内でのCCC短縮化を筆頭とする資金管理の徹底、営業キャッシュ・フローからの支出を基本としつつ、仮に資金調達が必要となった際には、必要金額や財務状況、株価および格付け、金融市場環境等を総合的に勘案しつつ、最適と考えられる手段での調達を選択する方針です。
ESG目標
また、「Vision2025」ではESG経営の観点を目標に組み入れました。①世界初、世界No.1技術の積み上げによる社会ニーズの解決 ②カーボンニュートラルを中心としたESG経営の推進 ③One Nidecとしての組織、ガバナンス強化の3点を公表しています。
①世界初、世界No.1技術の積み上げによる社会ニーズの解決
当社IRプレゼンテーション資料において、「5つの大波」として「人類共通の課題を解決する日本電産のソリューションビジネス群」を発表していますが、社会ニーズの解決こそが当社の存在意義であることを改めて認識した上で、お客様への製品・ソリューション提供を心掛けています。
②カーボンニュートラルを中心としたESG経営の推進
気候変動対策の一環として、①2040年度までに事業活動(Scope 1,2)をカーボンニュートラル化②サプライチェーン排出量(Scope 3)の削減計画を2025年度までに決定という2つの目標を設定しました。脱炭素化や省エネルギー化に資する製品、ソリューションの提供による社会ニーズの解決に加えて、自社事業が排出するCO2の抑制を推進し、 ESG経営を促進していきます。
③One Nidecとしての組織、ガバナンス強化
投資家の皆様からも当社ガバナンス体制については日々多くのご意見、ご要望をいただいています。2020年6月の監査等委員会設置会社への移行、2021年2月の報酬委員会の設置等、ガバナンス体制の強化を実施していますが、今後もさらなるガバナンス強化に向けて、体制を整備していきます。
IR活動
当社は投資家とのコミュニケーション(IR)を非常に重視しています。2020年度の国内外のセルサイドアナリストおよび機関投資家向けの延べ面談人数は約3,500名にのぼり、当社株式への関心に応えるべく、多くの面談を実施しました。こうした取り組みの結果として、インスティテューショナル・インベスター誌が実施した「2021 All-Japan Executive Team」調査の電子部品部門において、当社は各分野で首位を独占する結果となっています。
また、個人投資家向けのIRにも注力しています。個人投資家向けおよび証券会社販売員向けの説明会の定期的な開催に加えて、個人投資家向けの各種イベントへの参加や、個人投資家向けYouTube動画の作成・公開等、新しい施策にも取り組んでいます。
株主還元方針
当社は事業の成長、拡大による企業価値の向上を重要課題とする一方、株主還元も経営の重要なテーマとして認識しています。配当については、将来の成長に必要な研究開発や設備投資、M&A等に必要な内部留保を確保した上で、資本効率を考慮しつつ、継続的に株主還元を図ることとしています。自己株式取得については、経営環境の変化に応じた機動的な資本政策を遂行する手段として実施することを基本方針としています。
配当については、過去10年間、1株当たり配当金額は着実に増加し、2020年度は年間60円、配当性向28.8%となっています。自己株取得については、2020年1月24日~2021年1月22日の間に2,850,200株(18,527,768,000円相当)の取得を実施し、2021年1月26日~2022年1月25日では上限500億円(または上限400万株)の自己株取得枠を設定済みです。
中期戦略目標達成に向けた成長投資を財務規律とのバランスを見ながら加速しつつ、非財務面もESG経営を筆頭に推進し、株主価値の向上に努めていきます。