1-3-6 超音波モータ
超音波モータ(ultrasonic motor:USM)は、金属製弾性体(振動子、ステータ)で発生した振幅数μmの固有振動(共振)を、摩擦力によって移動子(ロータ、スライダ)の回転や、並進運動に変換するアクチュエータです。1980年に指田年生氏によって発明されました。弾性体の固有振動数(共振周波数)が、超音波領域(20kHz以上)であることから超音波モータと呼ばれています。
固有振動は、振動子内部に配置された圧電セラミックス(PZT)により発生させます。
一般の電磁モータと比較した場合の超音波モータの特長は、以下のようになります。
- ①低速・高トルク特性を有するため、減速機構が不要
- ②減速ギアが不要なため、静粛性に優れる
- ③非通電時に保持トルクを有する
- ④磁気の影響を受けず、電磁波を発生しない
- ⑤小型・軽量
一方、欠点は以下です。
- ①磨耗が大きいため、耐久性に劣る
- ②高速運転が困難
- ③高周波電源および複雑な駆動回路が必要
超音波モータは、以上に挙げた①~⑤の利点を活かし、一眼レフカメラのオートフォーカスや走査形電子顕微鏡、半導体製造装置、マイクロマシン製造装置などの精密位置決め機構に利用されています。
また、低速高トルク特性や非通電時のトルク保持特性を活かしてロールスクリーン・カーテンの昇降、ヘッドレストの位置決めにも使用されます。
さらに、磁力の影響を受けないモータという特徴を活かして、磁気を用いた医療診断機器であるMRIの本体や周辺機器等にも用いられています。
<一口コラム> ACとDC
ACはAlternating current、DCはDirect currentの略で、それぞれ交流、直流と訳されています。
ちなみにドイツ語では、
- 交流 Wechselstrom
- 直流 Gleichstrom
です。
<一口コラム> 過負荷
例えば、直流モータのシャフト(出力軸)に取り付けた機械的な負荷が軽いと、流れる電流は少ないのですが、負荷が重いと、同じ電圧を掛けていても電流が多くなります。電流が多くなるとモータ内部での電流による発熱が大きくなります。モータにとって適正な電流限界を超えた電流が長時間あるいは時々流れる状態が過負荷です。
モータの語源
英語では、初めは「動かすもの」という意味で「motator」といいましたが、やがて「motor」になりました。
発音は、イギリスでは「モウタ」ですが、若干「ア」に近い「モ」が正式発音のようです。アメリカ人の発音は「モーラー」のように聞こえます。
ドイツ語でも「Motor」と書きます。この発音をカタカナ表記すると「モトーア」ですが、昔のドイツ語教育では「モトール」でした。
誰がまちがえたのか知りませんが、「モートル」という言葉が生まれ、動力用モータの意味として使われ、今日に至っています。
正式な日本語や中国語では、電動機(デンドウキ、デンドンジ)です。つまり、電気をエネルギーとして回る原動機のことです。
その意味で、正式な英語では「electric motor」ですが、「electrical motor」と書くこともあります。
中国本土でも台湾でも、口語では馬達(マーダ)といいます。
電気学会で定めたカタカナ表記は「モータ」ですが、新聞は「モーター」です。
小さなモータのことを電気学会では「小形モータ」と表しますが、新聞では「小型モーター」となります。本書では「小型モータ」としています。
ここで、小型モータの外国語を紹介しておきましょう。